世界的なインフルエンザサーベイランスのまとめ(2004年1月10日現在)−WHO


(Vol.25 p 45-45)

インフルエンザウイルスA/Fujian(福建)/411/2002類似株(以下、Fujian株)関連の活動性が増加し、中央および東ヨーロッパ(オーストリア、クロアチア、ラトビア、ノルウェー、ロシア、スロベニア、スイス、ウクライナ)で大流行している。イタリアや日本でも活動性は増加し、カナダや米国のいくつかの地域でも大流行は続いている。

今シーズンの報告の多くはA/H3N2型であり、その大部分はFujian株で、残りはA/Panama/2007/99類似株(以下、Panama株)である。

A/H5N1型

ベトナムでは5人のA/H5N1型感染が確認され、5人とも死亡した。1月6日にWHO は、パンデミック事前対応のPhase 0 Level 2と宣言した。

数カ国で、高病原性鳥インフルエンザA/H5N1型による家禽類(鶏など)の集団発生が報告された。鳥インフルエンザがヒトに感染することが繰り返されれば、ヒトインフルエンザとの遺伝子組み換えが起こり、それにより新型インフルエンザの世界的な流行が起きる危険性が増加することを意味する。WHOはベトナムでの集団発生の調査と、数カ国の地域の核となる研究施設と共同で、最近にアジアで起こった集団発生でヒトと鳥から分離されたH5N1型ウイルスの遺伝子学的な分析を進めている。

この結果を踏まえ、WHOは、世界流行に備えたワクチン開発のためのプロトタイプウイルスを用意し、H5N1型ウイルスに対する診断検査キットを各国のインフルエンザセンターに送付する予定である。

各国の状況

カナダ:ニューファンドランド、ケベック、オンタリオで大流行が続いている。現時点までに集められた490株のインフルエンザウイルスは、456株(93%)がFujian株、25株(5%)がPanama株であった。他に、A/New Caledonia/20/99(H1N1)類似株とA/H1N2型が各1株、B型が7株[B/Hong Kong(香港)/330/2001類似株が1株、B/Sichuan(四川)/379/99類似株が6株]であった。

ノルウェー:インフルエンザの活動性は多くの地域で依然として続いているが、2003年51週から徐々に減少している。今シーズン集められた919株のインフルエンザウイルスA型のうち、237株がAH3型、27株がAH1型であり、抗原性を調べた中で前者はすべてがFujian株、後者はすべてがA/New Caledonia/20/99類似株であった。

スイス:インフルエンザの活動性は依然として広域で続いているが、2004年2週時点で、インフルエンザ様患者の受診と分離されたインフルエンザウイルスの株数は、最近の大流行の開始以来初めて減少した。抗原性が調べられたすべての株がFujian株であった。

英国:2004年第2週では、イングランド、スコットランド、ウェールズでは変化がないが、北アイルランドでは軽度に増加している。172株(97%)がFujian株、3株がPanama株、2株がB/Hong Kong/330/2001類似株であった。

米国:インフルエンザ様疾患の受診状況、広域流行している州の数、検査検体の中でインフルエンザ陽性の割合は、2004年第2週には減少している。しかし、肺炎とインフルエンザによる死亡は上昇を続けている。検査が行われた検体でインフルエンザウイルスが検出された割合は12%で、 313株のA型ウイルスと6株のB型ウイルスが検出された。2003年第40週以来、AH1 型が2株、A/H3N2型が 511株、B型が5株が検出され、A/H3N2型のうち81%がFujian株、19%がPanama株であった。

その他:ギリシャ、ガイアナ、香港、ハンガリー、モロッコ、ポルトガルでは小流行と報告された。アルゼンチン、オーストラリア、マダガスカル、スペインでは流行がないと報告された。

(WHO、CSR、2004年1月21日)

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