ロタウイルスサーベイランス、2002〜2003年−オーストラリア


(Vol.25 p 46-46)

1999年6月より、メルボルンにある国立ロタウイルスレファレンスセンター(NRRC)と、Western Australia、Northern Territoryにある協力研究施設が共同で、ロタウイルスのサーベイランスを行っている。本報告で述べるのは、2002年7月1日〜2003年6月30日までに急性胃腸炎で入院した子供から検出されたロタウイルスの血清型についてである。

協力研究施設では、EIAまたはラテックス凝集反応によるロタウイルスの検出を行っており、陽性検体は検体提供者の年齢、性別などの情報とともにNRRCへと送られている。検体は、A群ロタウイルスの5つの主要な血清型(G1、G2、G3、G4、G9)に特異的なモノクローナル抗体を用いたEIA、または型特異的プライマーを用いたRT-PCRにより型別が行われた。

対象期間中に急性胃腸炎として報告された子供の年齢は、12カ月以下が33%、13〜24カ月が39%、25〜36カ月が15%で、全体では3歳以下が87%、5歳以下が94%を占め、男女比は1.1:1であった。

NRRCを含む7つの研究施設においてロタウイルス陽性であった検体、計487件の血清型が検査された。全体の75%が血清型G9であり、7施設いずれにおいてもG9が50%以上を占めていた。次いでG1が全体の11%を占めたが、4施設のみからの検出であった。G2(0.8%)、G3(1.5%)、G4(0.2%)の検出はいずれも全体の2%以下であった。また、全体の3.4%は複数の血清型による混合感染であり、7.2%は型別不能であった。

G9は1997年に国内のサーベイランスで初めて検出されて以降、着実に増加しており、1999〜2000年、2000〜2001年の調査ではそれぞれ10%、18%と、国内で2番目に多い血清型となった。そして、2001〜2002年には40%を占め、最も多い血清型となった。2002〜2003年の全国的なG9の増加は、2001年にCentral Australiaで発生したロタウイルスG9による急性胃腸炎の大規模集団発生による可能性がある。一方、G1は1999〜2000年、2000〜2001年の調査ではそれぞれ58%、49%を占めていたが、2001〜2002年と2002〜2003年の調査ではそれぞれ39%、11%と大きく減少した。

1980年代の前半以降、世界的に行われたロタウイルス血清型の疫学研究では、主要な4つの型(G1、G2、G3、G4)が90%以上を占めていた。G9は新たに出現した血清型で、1996年から子供の急性下痢症の原因として頻繁に認められるようになり、現在では世界で5番目に多い血清型となっている。G9はすべての大陸で17カ国以上から検出されており、それらの割合は1〜8%である。オーストラリアにおけるG9の割合は、これまでに報告されている他の国々と比較して顕著に高い。

(Australia CDI, 27, No.4, 492-495, 2003)

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