長野県内で分離されたAH1型インフルエンザウイルス

(Vol.25 p 36-37)

長野県内の医療機関を受診した患者から、A/H1N1型インフルエンザウイルスを分離したので報告する。

症例は5歳の女児で、2003(平成15)年12月4日、発熱(37.6℃)および呼吸器症状を主徴に発症し、近医を受診した。受診時に鼻腔ぬぐい液を採取し、インフルエンザウイルス抗原検出用試薬(エスプラインインフルエンザA&B;富士レビオ社)で検査した結果、A型に弱い陽性を示した。

12月4日採取された鼻腔ぬぐい液をMDCK細胞、LLC-MK2細胞に接種したところ、MDCK細胞で2日後から細胞変性効果(CPE)が認められた。培養上清について0.75%モルモット血球を用いてHA試験を行い、国立感染症研究所から分与された2003/04シーズン用インフルエンザウイルス同定キットを用いてHI試験を行った。その結果、抗A/Panama/2007/99血清(H3N2)、抗A/Kumamoto(熊本)/102/2002血清(H3N2)、抗B/Shandong(山東)/7/97血清および抗B/Johannesburg/5/99血清(ホモ価、各160、320、40、1,280)に対しては、いずれもHI価<10であったが、抗A/Moscow/13/98血清(H1N1)(ホモ価640)に対してはHI価20、抗A/New Caledonia/20/99血清(H1N1)(ホモ価160)に対してはHI価160を示した。さらにRT-PCRによるNA型別を行った結果、N1と判定された。以上の成績から、今回分離されたウイルスは、ワクチン株であるA/New Caledonia/20/99(H1N1)に類似したA/H1N1型インフルエンザウイルスと同定された。

この患者に海外渡航歴はなく、患者の家族も数日前に別の医療機関を受診し、ウイルス抗原検出用試薬でA型インフルエンザウイルスの感染が確認されていたことから、今回の事例は家族内発生と考えられた。

2002/03シーズンには、県内においてAH1型は分離されず、国内でも滋賀県から1例(IASR Vol.24, 111参照)報告されているのみである。今回の分離が2003/04シーズンの流行につながっていくのか、今後の動向に注目したい。

長野県衛生公害研究所 横内文子 徳竹由美 中村友香 村松紘一
ふたば小児科     藤松 操

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp


ホームへ戻る