ノロウイルスによる感染性胃腸炎の施設内集団発生―宮崎県

(Vol.25 p 37-37)

宮崎県では、2003年12月以降、2004年1月6日までに5件のノロウイルスによる感染性胃腸炎の集団発生が起こっている。12月初旬に小林保健所管内で2件、12月下旬に高鍋保健所管内で1件、12月下旬〜1月上旬にかけて小林保健所管内で1件、高千穂保健所管内で1件発生し、5件のうち3件が老人施設で、他の2件は青少年研修施設と障害者関連施設であった(図1)。

これら5件の集団発生による患者総数は176名(施設利用者157名、施設職員19名)で、関係者398名(施設利用者304名、施設職員94名)のうち44%が発症した。また、これらの集団発生事例で調べた患者34名のうち、27名(79%)の便からRT-PCR法によりノロウイルスのgenogroup IIが検出された。

管轄保健所では患者発生の報告を受けた後、共通して摂食した食品のない1事例は、感染症として取り扱った。また他の4事例は、共通摂食食品があったため、感染症と食中毒の両方から調査を開始し、調理従事者の便についてPCR によるノロウイルスの検査を実施した。その結果、すべての事例でノロウイルスは検出されなかった。感染の拡がりはゆるやかなカーブを描いており、年齢や性別の違いによる感染率の差はみられなかった。また、研修施設での発生1事例については発症者の居住地の違いにより差異がみられた。このような病原体検査情報や患者の疫学調査により食品が原因とは考えられず、人から人への感染事例であると推察され、4事例についても感染症として取り扱った。

保健所は、患者の診察と治療にあたった医療機関と連携を取りつつ、施設に対して、入所者のケアにおける使い捨てゴム手袋の使用や、施設内のテーブルや椅子、ドアノブなどの0.1%塩素系漂白剤による消毒など、施設内の衛生管理について指導するとともに、入所者や施設利用者の体調管理に注意するよう指導した。

また、県の保健薬務課は、こうした施設を管理する高齢者対策課や障害福祉課などに対し、施設における衛生管理の遵守と、集団発生がおこった場合の速やかな保健所への連絡などの指導を依頼した。

高齢者や乳幼児は、感染防御のための適切な手洗いやうがいが困難な場合が多いので、施設の管理者や関係者は健康管理に注意するとともに、吐物や便などの適切な処理と十分な消毒を実施することが重要である。

また、集団発生がおこった場合、感染の拡がりを抑え発生を終息させるために、早期の疫学調査と病原体の特定が重要である。そのため施設内集団発生がおこった場合、施設から管轄保健所への情報提供が速やかに実施されるよう連携を強めるとともに、感染を予防するための講習会など衛生指導を実施していく必要があると思われる。

宮崎県衛生環境研究所
岩城詩子 山本正悟 元明秀成 岩切 章 斎藤信弘 鈴木 泉
宮崎県保健薬務課
宮崎県小林保健所
宮崎県高鍋保健所
宮崎県高千穂保健所

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