麻疹ウイルスの地域流行−千葉県

(Vol.25 p 70-71)

2003年4月、県中央部佐倉保健所管内Y市の医療機関から、麻疹が流行しているとの情報がありウイルス検査を実施した。

得られた検体は、臨床的に麻疹と診断された患者の咽頭ぬぐい液9検体、麻疹疑い患者の咽頭ぬぐい液2検体であり、年齢は、9カ月〜16歳であった。B95a細胞を用いたウイルス分離と、感染症研究所・地方衛生研究所全国協議会発行の麻疹診断マニュアル記載のプライマーを一部改変して作製したプライマーを用いてRT-PCRを実施した。ウイルス分離では、患者5検体が陽性であった。RT-PCRでは患者9検体すべてと、疑い例の1検体が陽性であった。ダイレクトシークエンスの結果、すべてが遺伝子型H1型であった。

なお、千葉県で検出されている麻疹ウイルスの遺伝子型は、2000、2001年がD5型、2002年はD5型とH1型が検出されているがH1型が主であり、2003年は、2月17日〜8月19日までに採取された上記10例を含めた22例の患者検体から検出されたウイルスのうち、20例がH1型、2例が型未同定である。

また、同時期に同市のM小学校から麻疹患者の集団感染の報告があった。疫学調査の結果、在籍者数1,186名の小学校で、4月7日の始業日に4年生6名、6年生2名、1年生1名の9名の麻疹による欠席者があり、4月28日には累積麻疹欠席者は54名となった。54名の内ワクチン接種者は14名(26%)、ワクチン未接種者は33名(61%)、不明7名(13%)であった。

この年の千葉県での流行は、保健所別4週間合計の定点当たり患者発生数でみると、茂原保健所管内で第3〜6週に流行が始まり、次いで佐倉保健所管内、市原保健所管内、さらに香取保健所管内に広がっていった。今回、H1型での地域発生が確認できた佐倉保健所管内での麻疹流行は、第7〜10週に始まり、第15〜18週にピークを迎えたものである(図1)。

千葉県衛生研究所
小川知子 窪谷弘子 篠崎邦子 海保郁男 斎加志津子 小倉 誠 一戸貞人

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