2003年12月〜2004年2月にカンボジア、中国、インドネシア、日本、ラオス、韓国、タイ、ベトナムで高病原性鳥インフルエンザ発生が報告された。2004年2月9日時点でタイとベトナムで、検査で確認されたインフルエンザA/H5N1型のヒト感染例計23人と、18人の死亡が報告された。さらにタイとベトナムの保健担当部局により、約100人の疑い例が調査中である。
ベトナムの発生で確認された妹1人を含む、ベトナムとタイの確認例5人から得られたA/H5N1型ウイルスの塩基配列からは、これらすべてのウイルス遺伝子が鳥起源であることが示された。鳥とヒトのインフルエンザウイルスの間で遺伝子再集合が生じた証拠は、認められなかった。
最近のA/H5N1型ウイルスは、1997年と2003年に香港でヒトから分離されたものとは抗原性で区別される。タイとベトナムで分離された5人のA/H5N1型の遺伝子塩基配列からは、抗インフルエンザウイルス薬のアマンタジンおよびリマンタジン耐性の関連遺伝子を有していることが示された。
分離されたA/H5N1型は、ノイラミニダーゼ拮抗薬オセルタミビルに対して感受性であることが示された。ノイラミニダーゼ拮抗薬ザナミビルに対する感受性試験は進行中である。
CDCは、州および地方の健康部局、病院、臨床医に対して、インフルエンザA/H5N1型ウイルスに感染した可能性のある患者を発見するための努力、およびインフルエンザA/H5N1型が疑われたときには感染管理予防策を取ることを勧告する。下記の2項目どちらも満たす入院患者に対して、インフルエンザA/H5N1型感染の検査が必要である。
1)X線写真上、肺炎、ARDS、あるいは診断が得られていない他の重症呼吸器疾患の確認
2)症状発現10日以内に、トリまたはヒトでのA/H5N1型鳥インフルエンザ感染が報告された国への渡航歴
インフルエンザA/H5N1型の検査に当たっては、州および地方の保健部局への相談を基本とし、下記の3項目すべてを満たす入院、または外来患者の際にケースバイケースで検討するべきである。
1)38℃以上の発熱
2)咳、咽頭痛、息切れ
3)症状発現10日以内にA/H5N1型伝播確認国において、鶏または飼育されていた鳥との接触歴(例:養鶏場、鳥を飼育している家庭、鳥市場への訪問)、またはインフルエンザA/H5N1型患者または疑い例との接触歴
*インフルエンザA/H5N1型と診断されたか、または検査中の入院患者に対する予防策は、以下に示すごとくSARSに対して使われた予防策と同様である。
・患者に接触する前後で手の衛生に慎重な注意を払う。
・患者に接触するのに手袋とガウンを使用する。
・患者から約1m(原文では3フィート)以内の場合は、目の保護装備を着用する。
・患者を空気感染隔離室に入室させる(1時間に6〜12回空気を換え、陰圧状態をチェックする)。
・患者の部屋に入る際、'National Institute for Occupational Safety and Health'で認可されたN95マスクを着用する。
*外来患者、または14日以内に退院した入院患者に対しては、SARS患者の自宅隔離の原則を基本とし、家で隔離されるべきである。
*これらの予防策は、別の診断が確定されるか、または診断検査によりインフルエンザAに感染していないことが分かるまでは、症状発現から14日間続けるべきである。
高病原性鳥インフルエンザA/H5N1型ウイルスの検査には、確実な方法としてBSL3以上の検査室が必要である。CDCは、検査基準に合致した患者の呼吸器検体からのウイルス分離は、BSL3以上をすべて満たさない限り実施すべきでないと勧告する。しかしながら、臨床検体のPCR検査はクラスIIの生物学的安全キャビネットで、標準的BSL2の業務として扱うことができる。
市販のインフルエンザ抗原検出検査は、BSL2で行うことができる。ヒトのインフルエンザに対する迅速診断検査で鳥インフルエンザウイルスA/H5N1型も検出できるが、感度はウイルス培養やPCRより低い。
臨床的および疫学的基準に合致したヒトからの検体で、PCRまたは抗原検出検査でインフルエンザAが陽性であったとき、またはその地方でインフルエンザのPCRができない場合には、検体をCDCに送るべきである。
(CDC, MMWR, 53, No.5, 97-100, 2004)