集団かぜからのアデノウイルス4型の分離−名古屋市

(Vol.25 p 98-99)

2003年11月27日にT小学校1年で発生した名古屋市における2003/04シーズンの集団かぜの初発事例からアデノウイルス(Ad)4型を分離したので、患者発生状況とウイルス分離状況を報告する。

患者発生状況:集団かぜの措置内容は1年のクラス閉鎖であった。措置クラスの患者数は在籍者27名中13名(罹患欠席者9名、罹患出席者4名)であった。T小学校における11月27日現在の各学年の罹患状況を表1に、閉鎖措置の行われた日前後の全校と措置クラスの患者発生状況を表2に示した。

患者の臨床症状表3に示した。主な症状は発熱、上気道炎であり、消化器症状も認められた。

検体採取:措置クラスの罹患欠席者9名のうち、保護者の同意が得られた患者6名からうがい液、2名から急性期血清、1名から回復期血清を採取し、検査を行った。

ウイルス分離状況:HEp-2細胞4代で6名中4名からAd4を分離した。集団かぜのウイルス分離は、通常、インフルエンザウイルス分離のためにMDCK細胞に接種する。インフルエンザウイルスが分離できない場合に備えて、HEp-2細胞にも接種している。HEp-2細胞でのウイルス分離は、通常、接種後2週間で継代し、2代継代後2週間観察して終了している(細胞の状態が悪い場合やCPEの気配がある場合には継代を早めたり、継代を続行したりしている)。今回の場合は、MDCK細胞3代で、インフルエンザウイルスは分離陰性であった。回復期血清は1例しか採取できなかったが、インフルエンザウイルスに対して、抗体の有意上昇は認められなかった。また、パラインフルエンザウイルスに対しても、抗体の有意上昇は認められなかった。このため、HEp-2細胞での分離を続行した。3代目では、CPEが認められたが、鮮明ではなく、4代目でAd特有のCPEが出現した。CPEは出現したが、全体に広がるのに時間を要し、さらに継代をして、5代目で同定を行った。同定は、Ad NT試薬「生研」を使用して中和試験を行った。同定は容易であった。

分離株(患者No.6)に対する中和抗体価:2例の急性期血清では<10、回復期血清が得られた1例では160倍であった。

過去の検出状況:名古屋市におけるAd4の検出は、過去10年間では、1994年1例、1995年2例、1998年1例、2000年に6例あるが、多くはない。

最近の分離:2004年2月16日採取の咽頭結膜熱患者の鼻腔吸引液からAd4を分離した。この分離例では、検体採取日は発病日翌日であった。接種後4日目で鮮明なCPEが認められ、同定を行った。また、検査依頼票の疫学的事項の欄に保育園での流行と記載されていた。

今回の集団かぜ事例では、分離に時間を要したが、これは、発病日から4日を経過しており、検体はうがい液であったため、ウイルス量が少なかったためと推測される。

また、分離ウイルス数として、多くはあがってこないが、今年のシーズンはAd4の流行もあると推測される。

名古屋市衛生研究所微生物部 後藤則子 木戸内 清
健康福祉局健康部健康増進課結核感染症係 林 昌徳
緑保健所保健予防課保健感染症係 原田清仁 小酒井葉子 日下部一雄

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