2003年にオランダで発生した高病原性鳥インフルエンザ(H7N7)事例の報告書が公表された。発生は2003年2月末に始まり、3月1日にはオランダ農業省がすべての鶏肉および鶏関連製品の輸出禁止を発表した。事例発生の間に、感染は225の養鶏場に広がり、約3,000万羽の鶏を殺処分することになった。
動物の感染制御関係者での健康異常の報告が増加したので、養鶏場従業員、養鶏場経営者およびその家族に対し、積極的症例探査が実施された。453人が健康異常を報告、結膜炎が最も一般的な症状(349人)であった。インフルエンザウイルスA/H7N7型は89例(20%)で検出された。57歳の獣医師1人が死亡した。この獣医師は高病原性鳥インフルエンザに感染した鶏がいた数カ所の養鶏場を訪問していた。さらに、インフルエンザウイルスA/H7N7型確認症例との接触者3人が、インフルエンザウイルスAH7型検査陽性であった。
制御対策が早期に取られた。3月3日に鳥インフルエンザの原因としてインフルエンザウイルスA/H7N7型が確認されたので、鶏と接触する全従業員は予防用の眼鏡とフェースマスクの着用を勧告された。その後、ヒトの感染症例が増加したのでインフルエンザ予防接種が考慮され、感染鶏を扱ったり、検査や殺処分する可能性のある全養鶏場の従業員に接種された。この方針の目的は、感染した人の中で鳥とヒトのインフルエンザウイルスが遺伝子再集合する可能性を低くすることである。インフルエンザ予防接種の勧告は後に、感染した養鶏場から半径3km圏内の全養鶏場の従業員と家族、および感染が疑われる者に拡大された。オセルタミビルによる治療がすべての結膜炎症例に勧められ、オセルタミビルの予防内服は、感染した可能性がある鶏を扱う全員に対し、最終曝露後2日間投与された。
ウイルスの塩基配列からは、分離株は完全に鳥由来で、ヒトインフルエンザウイルスの遺伝子を保有していないことが示された。しかし、死亡例から分離されたウイルスには多くの変異があり、この症例で病原性が増強した可能性がある。養鶏場従業員の職種ごとの感染率を比較し、種々のリスクファクターの影響を調査するために、さらなるコホート研究が行われている。
(Eurosurveillance Weekly, 8, Issue 9, 2004)