ハイチ旅行でジフテリアに罹患し、死亡、2003年−米国・ペンシルベニア州


(Vol.25 p 104-105)

ジフテリアは、ワクチン未接種者が罹ると重症化や死亡の可能性があり、適切な治療を受けても致死率5〜10%である。以下に述べるのは、外国旅行前にジフテリア予防接種を受けることの必要性を示す、米国での死亡例である。

男性(63歳)はジフテリアのワクチン接種歴が無かった。ジフテリアの流行地であるハイチでの旅行中にのどの痛みを生じ、米国へ帰国後、のどの痛みと嚥下困難を訴えて受診した。気道閉塞と呼吸不全を伴う急性喉頭蓋炎と診断され、8病日まで抗菌薬等による治療が行われた。その時期にメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が分離されたが、ジフテリア菌は分離されなかった。8病日に、ジフテリアを疑わせる偽膜が認められた。各種抗菌薬の投与が続けられるとともに、9病日にジフテリア抗毒素が投与された。11病日には、CDCでのPCR検査で偽膜からジフテリア毒素の遺伝子が検出された(ジフテリア菌は検出されなかった)。患者は17病日に心臓の症状を併発し、死亡した。

患者がジフテリア流行地に旅行したこと、発症後の経過、PCRによる遺伝子検査の結果を総合し、ジフテリアと診断された。

患者の妻、ヘルスケア担当者、ハイチ旅行の同行者、病院での同室者にジフテリアの検査(菌の分離とPCR検査)が行われ、全員が陰性であったが、予防的な抗菌薬の投与が行われ、また、過去5年間にジフテリアワクチン接種を受けていない者には接種が行われた。

MMWR編集部註:ジフテリアに対して十分な免疫状態にしておくには、小児期のワクチン接種による基礎免疫に加えて、10年ごとに追加免疫を行うべきである。外国旅行をする際には、旅行目的国に合わせた疾患予防のみならず、ジフテリアを含む一般的に推奨されるワクチンの接種の更新を確実にしておくべきである。

(CDC, MMWR, 52, No.53, 1285-1286, 2004)

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