小学校就学時健康診断票を活用した麻疹および風疹ワクチン接種率調査−長野市

(Vol.25 p 102-103)

麻疹と風疹は予防接種により患者発生を防止できる疾患であるが、長野市の感染症発生動向調査には、麻疹は2000(平成12)年に5人、2001(平成13)年54人、2002(平成14)年21人、2003(平成15)年5人が、風疹は2000年9人、2001年4人、2002年2人、2003年2人が報告され、患者発生が持続している。また、2003年4〜5月には行政機関内で成人麻疹集団発生がみられた(本月報Vol.25, 68-69参照)。そこで、長野市では麻疹・風疹の予防接種率を上昇させ、患者発生数を減少させることを目標に、今年度より予防接種率の把握を開始した。接種率把握の一環として、長野市教育委員会の協力を得て、上記調査を実施したのでその概要を報告する。

2004(平成16)年4月に長野市立の小学校(49校)への入学予定者(3,515人、5〜6歳)を対象に就学前健康診断が2003年10月に行われた。49校の小学校から調査の協力を得られ、3,496人(99.5%)の接種歴の情報を得た。

3,298人が麻疹ワクチンの接種を受けていた。全体の接種率は94.3%で、学校別の接種率の範囲は82.8〜 100%であった。接種率が100%であった学校は10校、90%以上100%未満であったのは35校、80%以上90%未満であったのは4校であった。市内保健センター・支所の管轄する8地区別では、93.7〜97.6%であった。

3,079人が風疹ワクチンの接種を受けていた。全体の接種率は88.1%であった。学校別の接種率の範囲は30.8〜 100%であった。接種率が 100%であった学校は2校、90%以上 100%未満であったのは13校、80%以上90%未満であったのは30校、70%以上80%未満であったのは3校、70%未満であったのは1校であった。市内保健センター・支所の管轄する8地区別では、86.6%〜89.9%であった。

長野市では、今回初めて就学前児童の麻疹・風疹予防接種率調査を実施したが、麻疹の予防接種率は風疹予防接種率に比較して高かった。この要因として、保護者に麻疹予防接種を優先するよう広報している影響や、実際に罹患したときの重症度の違いが考えられた。麻疹予防接種率90%未満の4校のうち、1校だけが風疹予防接種率も80%未満であった。風疹予防接種率が30.8%と最低だった小学校は、中山間地にあるが、接種医療機関は地区内に2カ所あり、麻疹は対象児童13人中12人が接種済みであった。学校間では予防接種率の差がみられたが、市内の保健センター・支所の管轄する8地区別ではほとんど差はみられなかった。小学校入学間近になっても、麻疹・風疹ワクチン未接種者がいることから、ワクチン接種を確実に勧奨する必要がある。今年度は就学時健康診断受診者全員に予防接種の説明書、問診票を配布したが、未接種者への対面での接種勧奨、幼稚園・保育園での接種勧奨の徹底等、より有効な方法に改善する必要がある。風疹予防接種については、保護者に麻疹と同様に接種が必要であることを伝えることも重要である。今後も、本調査を継続し、できる限り全員が接種するよう接種勧奨の徹底により接種率を向上し、長野市での麻疹・風疹の患者発生をなくすことが目標である。

長野市保健所 西井中子
長野市教育委員会 上石秀明
国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース 森 伸生 大山卓昭

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