東京都南新宿検査・相談室におけるHIV 検査事業の実施状況

(Vol.25 p 170-170)

南新宿検査・相談室の概要

東京都南新宿検査・相談室(以下「同検査室」)は、東京都医師会の委託事業として1993(平成5)年9月に開設された、繁華街に近接する公設HIV専門検査相談機関である。開設以来行っている平日夜間の検査に加え、2003(平成15)年4月からは土日午後の検査も行っている。以下、HIV検査事業の実施状況について、発生動向および受診者属性の視点から述べる。

検査件数・陽性件数・陽性率から見た発生動向

1日平均29.4人(2003年)が受診しており、11〜12月のエイズ予防月間には1日60名程度に増加する。年間の検査件数と陽性件数・陽性率の年次推移を図1に示す。検査件数は1998(平成10)年以降は常に7,000件を超えているが、2003年には土日検査を始めたこともあり、9,000件を超えている。陽性件数・陽性率は増加傾向にあり、この3年間の陽性率は1%前後である。2003年の陽性率0.93%は、厚生労働省エイズ動向委員会で報告された同年全国献血者陽性率の約600倍に当たる。同検査室からのHIV感染症報告は、検査室の性格上、ほとんど無症候性キャリアのみであり、2003年では東京都全体の無症候性キャリア報告数の約3分の1を占めている。

受診者の属性、行動実態

同検査室では1993年の開設当初から、受診者の意識・実態を調査し、今後の施策の参考とすることを目的として、結果告知後の陰性者を対象に自記式質問紙によるアンケート調査を行っている。2002(平成14)年までの10年間、56,928人分のデータが分析されており、同期間の累積検査件数は67,804件に対し、平均回答率は84%である。

受診者属性を表1に示す。男女比は約7:3、年齢別では20代が過半数であり、職業別では勤務者が63%である。検査回数が2回目以上のリピーターが34%存在するが、年々割合が高くなっており、2002年には42%となっている。感染を心配する原因を聞いた項目では、同性間性的接触が15%(相手が特定3.7%、不特定11%)、異性間性的接触が76%(相手が特定29%、不特定48%)である。心配原因が同性間性的接触である割合も年々増加し、2002年には21%となっているが、同年の東京都保健所(多摩地域)のデータ(未公表)と比較して約3倍である。これらの結果には同検査室の開室の時間帯や周辺環境が大きく関係していると考えられる。

2002年については、同検査室を知るきっかけとなった媒体も分析されている(図2)。受診者の最も多い20〜30代では、インターネットで知る割合が最も高く、クチコミは10〜20代で割合が高い。年齢層が上がるほど、マスコミ、電話等の割合が高くなってくる。パンフレットで知る場合は多くはないが、いずれの年代でも10%台前半の一定の割合を占めている。HIV感染者報告数の多い年齢層に訴求する媒体としてのインターネットの活用、広報内容や標的とする年齢層に応じた各種媒体の使い分けが、今後の予防啓発における課題の一つとして示唆される。

現在、2003年分データの分析中であり、同検査室におけるアンケートも継続されている。2003年以降については、新たに開始した土日検査の受診者属性の分析も重要な課題と考えている。より効果的な予防啓発や検査体制の充実に資するために、これらのより詳細な分析を踏まえ、アンケート項目の改善についても検討しているところである。

東京都健康局医療サービス部・感染症対策課 阿保 満

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