男性間性交渉者におけるA型肝炎の増加−デンマークおよびオランダ


(Vol.25 p 183-184)

デンマーク:Statens Serum Institutの疫学情報によると、デンマークで18歳以上の男性の間にA型肝炎の集積が確認された。2004年のこれまでに、男性28名の症例が報告されている。コペンハーゲンの20例のうち、少なくとも16名はMSM(men who have sex with men:男性と性行為を行う男性)である。

18歳以上の年齢での年間のA型肝炎報告数を過去5年間についてみると、中央値は8名(6〜11名)であった。報告の紛失あるいは遅れがあるために、今回のアウトブレークの全体像はまだ示されていない。コペンハーゲンのMSM間では梅毒も増加しているが、これら2つの関連性については分かっていない。

感染者との濃厚接触者、特に家族やセックスパートナーはできるだけ速やかに、免疫グロブリンあるいはA型肝炎ワクチンを受けるべきである。免疫のないMSMで不特定多数と関係をもつ者はA型肝炎ワクチンを、できればB型肝炎ワクチンと一緒に受けるべきである。感染の拡大を防ぐためには、MSMコミュニティーに対してこのアウトブレークのことと、感染経路について知らせることが重要である。

MSM間でのA型肝炎のアウトブレークは、コペンハーゲンでも外国でも以前から報告されており、サウナなどの場所で感染していた。デンマークにおける最も最近のアウトブレークは1991年に起きている。MSM間でのA型肝炎感染の危険因子としては、最近行きずりのセックスパートナーを持ったこと、口腔-肛門性交、指-肛門性交、ある種のバーやサウナへ行くこと、などがある。性行為以外の社会的接触、汚染食品も感染に関係する。しかし、今回のアウトブレークでは今のところ、特別な危険因子は見つかっていない。デンマークのHIV/AIDS組織は、A型肝炎を含めた性感染症(STD)についてのキャンペーンを始めている。

オランダ:オランダでは、春〜初夏には通常みられないA型肝炎の発生増加がみられた。特にMSM が感染しているように思われる。2004年になって、18歳以上の男性でのA型肝炎が99例報告されたが、2003年の同時期には37例であった。2004年の報告では、A型肝炎の危険因子として同性間性行為を挙げたのは31例であった。この国のA型肝炎の報告では、性行動についての情報の記載は標準的な要求事項ではないので、この感染経路は現在過小評価されている可能性がある。

2003年の同時期では、男性間性行為による報告は1例のみであった。しかし、MSM間でのA型肝炎の同様の増加は2001年にもみられており、今回のアウトブレークは珍しいものとは言えない。

最近、MSM間で鼠径リンパ肉芽腫のアウトブレークが起きているために、MSMコミュニティーでのSTDの認識は向上しているが、そのために、感染伝播の危険因子として男性間性行為がより多く報告されていることも考えられる。

(Eurosurveillance Weekly, 8, Issue 22, 2004)

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