中国からの養子における麻疹のアウトブレーク−ノルウェー


(Vol.25 p 184-185)

2004年3月末に中国からノルウェーへ来た8人の養子のうち、4人が到着後間もなく発疹を呈し、検査によって麻疹であることが確定した。そして4月初旬、その発症した1名の児の母親がノルウェー公衆衛生研究所に対し、注意喚起の報告を行った。数日後、2004年3月に米国に引き取られた中国人の養子の間で、同様の6例の確定例、3例の疑い例が発生していることが判明した。麻疹が国際的な感染症であり、数名の児は中国からノルウェーまでの移動中に感染性を有していたことから、4月14日、EUの公衆衛生情報ネットワーク感染症サーベイランスシステム(EUPHIN HSSCD)を通じて警告が出された。スペインから返答があり、中国湖南省から来た養子の1例が疑い例であることが報告された。

インターネット検索、里親との連絡を含めた疫学調査で、ノルウェーの養子は、米国に養子に行って麻疹を発症した者と同じ孤児院(湖南省)の出身であることが分かった。

アウトブレーク発生時、子供達は1名を除いて、すべて11〜12カ月齢であった。孤児院職員は里親に対し、子供達は麻疹の予防接種を受けていないことを説明していた。正式な説明ではなかったが、里親の何人かは、その孤児院での集団発生についての噂を聞いていた。

ノルウェーの里親は一つのグループで中国に行き、彼らは3月22日に孤児院で子供たちを引き取った。飛行機が北京を出発する前、1人が発疹を伴う病気で入院し、その子の出発は数日間遅れた。この病院では肺炎と診断され、麻疹は確定されなかった。しかしこの児を含み、後に発疹の認められた4人の子供が検査により麻疹と確定された。麻疹を発症した子供達は完全に回復し、ノルウェーではこのアウトブレークの期間中に二次感染の報告はなかった。

ノルウェーのワクチンプログラムでは、麻疹・ムンプス・風疹(MMR)ワクチンの接種を15カ月齢と13歳に行う。2歳児でのMMR接種率は他のワクチンよりわずかに低く、ここ数年間では約90%である。ノルウェーで最近の4年間でみると、年間の麻疹の発生は0〜8例であるが、それらは輸入例か、輸入例に関連したものであり、国内ではめったに二次感染は発生していない。近年の麻疹の多くは難民に発生し、彼らがノルウェー到着後に発症している。今回のアウトブレークから忘れてはならないことは、外国から養子を引き取った場合、彼らの新しい母国に疾患を運びうることである。養子縁組の機関は出身国の当局の協力を得て、養子が必要なワクチン接種を受けており、その接種の記録が適切になされていることを確認すべきである。

(Eurosurveillance Weekly, 8, Issue 21, 2004)

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