1994年南北アメリカ大陸の各国は、2000年までに西半球での麻疹の伝播を「排除」(elimination)するという目標を採択した。
麻疹患者数は1990年の約25万人から2003年の105人(6カ国)へと、99%以上減少した。麻疹「排除」に向けて鍵となるワクチン接種活動は、PAHOが推奨する方策の実施、あるいは麻疹含有ワクチンの2回接種の定期予防接種率を95%以上に達成することである。その中心は全国レベルでの補足的ワクチン接種活動(SIA)であるが、SIAを受けた小児の推定数は2000年1,040万、2001年1,060万、2002年990万であった。南北アメリカ大陸全体での定期予防接種率は2000年は94%、2001年96%、2002年92%であったが、地域ごとに見ると、2002年の報告では51%〜99%まで幅広く、90%以上の接種率が28カ国、それ未満が12カ国であった。2002〜2003年の間に、麻疹あるいは風疹の疑いとして、それぞれの国のサーベイランスシステムに報告された数は、46,629人から30,118人に減少した。
2002年には2,584人の麻疹確定例が報告された。このうち2,397人は、D9型ウイルスがヨーロッパから輸入され、ベネズエラで集団発生したものである。これはコロンビアにも広がったが、そこでは139人が報告された。同年他には、米国で44人、カナダで6人、ブラジルで1人が報告された。
2003年には105人の確定例が報告された。内訳はチリ、コスタリカでそれぞれ1人、ブラジルで2人、カナダで15人、米国で42人、メキシコで44人である。チリの1人は、日本への旅行後に発症した33歳の男性である。同年の米国における麻疹による死亡者は2人であり、1人は13歳の免疫不全者、他の1人は75歳の帰国者であった。
ウイルスの遺伝子型では、東アジアで伝播しているH1型ウイルスがメキシコでの3つの流行と、マーシャル群島から輸入された可能性のあるハワイでの1流行に見られた。この遺伝子型はチリの症例でも検出された。ハワイの症例以外で、2003年に米国で報告された集団発生例や散発例は、レバノン(D4)、ドイツ(D7)、フランスまたはイタリア(D7)、イスラエル(D6)からの輸入に関連していた。
(CDC, MMWR, 53, No.14, 304-306, 2004)