狂犬病による小児の死亡例と狂犬病の現状−リトアニア


(Vol.25 p 185-186)

2004年2月21日、リトアニア南部のAlytusに居住する5歳の男児が狂犬病を発症し、3月10日に死亡した。診断は免疫蛍光抗体法により確定された。男児は、同じリトアニア南部のPrienaiから、2003年11月にAlytusへ移住していた。現地での疫学的調査によれば、2003年10〜12月にAlytus、および周囲の郡で動物の狂犬病11例が報告されている。また、Prienai地区での調査によれば、同時期に動物の狂犬病2例が報告されている(イヌ1例、マングース1例)。両親によると、この男児は動物との接触歴もなく、現時点では感染源は不明である。

近年、リトアニアでの狂犬病の状況は悪化している。動物による外傷を受け、医療機関を受診する人の数は増加傾向にある。2003年に動物による外傷で医療機関を受診した者11,797人のうち、狂犬病が確定されたイヌに噛まれた人は449人であった。2003年のリトアニア全土における狂犬病の動物の登録数は前年より175例増加し、1,108例であった。そのうち、野生動物が72%を占めていた(キツネ378例、アライグマ299例、テン81例、フェレット18例、アナグマ11例など)。一方、家畜やペットも28%を占めた(ウシ152例、ネコ81例、イヌ65例、ウマ12例など)。イヌやネコには定期的にワクチンが接種されているが、ウシには、狂犬病が集中的に発生している地域でのみ接種されている。また2000年〜2003年には、キツネに対するえさを用いてのワクチン投与が、財源の不足により中断されている。リトアニアにおけるヒトの狂犬病による死亡例としては、1960年〜2004年の間に11例登録されている。そのうち7例では狂犬病の野生動物、3例では狂犬病の家畜やペットとの接触があった。

2002年に狂犬病に関する疫学的/動物伝染病学的サーベイランス、および制圧プログラムが承認された。それに加えて、リトアニア全土での野生動物への経口ワクチン接種に対し、Phare management committeeによる資金援助が行われる予定である。

(Eurosurveillance Weekly, Issue 16, 2004)

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