クラミジアの分類は、1989年以前は1目1科1属とされ、Chlamydia trachomatis とChlamydia psittaci の2種に分類されていたが、1989年にGraystonら1)によってChlamydia pneumoniae が追加され、また1992年にFukushi ら2)によりC. pecorum が追加されて4種となった。その後、1999年にはEverett ら3)によって新たな提案がなされた。
この新分類は16Sおよび23SリボゾームRNA遺伝子解析、さらに染色体DNAの相同性に基づいて分類されたもので、1科が4科に増え、従来の属はChlamydiaceae 科としてChlamydia とChlamydophila の2つの属に分けられた。C. pneumoniae は従来のC. psittaci 、C. pecorum に新たに加わった3種とともにChlamydophila 属に含まれることになった。C. trachomatis は、従来どおりChlamydia 属に留まり、種としてはヒト固有のC. trachomatis 、ブタのC. suis 、マウスおよびハムスターのC. muridarum の3種に分類された。C. trachomatis は、さらにbiovar Trachomaと、biovar Lymphogranuloma venereum (LGV)に分けられる。旧分類との対比を表に示した。
実際には、この新分類には多数のクラミジア研究者が異論を唱え、現時点でも議論が継続中であるが4,5)、2001年のBergey's Manualに掲載されたことからも、おそらく次第に定着していくものと思われる6)。ただし、将来的には新たなゲノム情報によってさらなる再編もあり得るので、今後も動向を見守る必要がある。
文 献
1) Grayston J.T., et al., Int. J. Syst. Bacteriol. 39: 88-99, 1989
2) Fukushi H. and Hirai K., Int. J. Syst. Bacteriol. 42: 306-308, 1992
3) Everett K.D., Int. J. Syst. Bacteriol. 49: 415-40, 1999
4) Schachter J., et al., Int. J. Syst. Bacteriol. 51: 249, 2001
5) Everett K.D. and Anderson A.A., Int. J. Syst. Bacteriol. 51: 251-253, 2001
6) David R. Boone, et al., edited, Bergey's Manual of Systematic Bacteriology Second Edition Volume one, The archaea and the deeply branching and phototrophic bacteria 2001
国立感染症研究所・ウイルス第一部 岸本寿男