ロッキー山紅斑熱の家族内発生における致死例、2003年−米国


(Vol.25 p 211-211)

ロッキー山紅斑熱(RMSF)は紅斑を主徴とするダニ媒介によるリケッチア感染症であり、未治療での致死率は30%に上る。また、72%が入院による治療を要し、その場合も致死率は4%である。死亡例のうち12%が10歳未満の小児である。本稿では、2003年夏に起きた3例の小児RMSFの致死例についてまとめるが、1)死亡を防ぐための早期診断と適切な治療、2)患者と同じ環境で生活する者に発生した熱性疾患としてRMSFを鑑別に入れること、などの重要性を強調するものである。

オクラホマ州:2003年5月下旬、7歳の女児が39℃台の発熱、腹痛などを主訴に発症し、4日後には発熱・筋肉痛、消化器症状、肝腫大、および手掌を含む全身性の紅斑、白血球増多、血小板減少、肝逸脱酵素上昇の所見を呈した。RMSF疑いにてドキシサイクリン静注を受け、PICUへ収容されたが改善を認めず、6日後に呼吸不全で死亡した。死亡2日前に採取された血清での間接免疫蛍光抗体法(IFA)で、抗Rickettsia rickettsii IgG抗体陽性(128倍)を認め、剖検組織での免疫組織化学染色(IHC)で紅斑熱群リケッチアを検出した。

さらに、6月1日からは3歳の妹が熱性消耗性の症状を呈した。身体に紅斑を認めたために、RMSFの診断で翌日よりドキシサイクリン投与が行われた。有症時および5カ月後の血清でIgG抗体の上昇を確認した。姉妹のいずれにも明らかなダニ刺咬の既往は報告されていないが、飼い犬には多くのダニが付着しており、ダニを用手的に除去していた。

ケンタッキー州:8月上旬、2歳男児が38℃台の発熱、および四肢体幹の紅斑を呈した。4日後に嗜眠、歩行障害、白血球増多、貧血などの症状が増悪した。5日目に入院し、セフトリアキソンおよびステロイドの投与を受けた。症状の改善を認めず、8日目に多臓器不全で死亡した。死亡2日前の血清で抗R. rickettsii IgM抗体(9.4単位)を認め、剖検組織のIHCで紅斑熱群リケッチアを検出した。

また、同児の死亡2日前より、40歳の母親が発熱とともに複視、眩暈、頭痛を呈し、経口ドキシサイクリンおよびセフトリアキソン静注による治療を受けた。5日後に軽快した。有症時および2週間後の血清で、抗R. rickettsii IgG抗体の陽転を確認した。家族は森と湖の近くに住んでいたが、明らかなダニ刺咬の既往は記憶にないとのことである。

アリゾナ州:8月中旬に、14カ月の男児が手掌を含む全身性紅斑を伴った発熱、舌の白色滲出液を認め、胸部レントゲンでは右下葉の浸潤影を認めた。抗菌薬や抗真菌薬による治療を受けたが翌日入院し、3日後には敗血症、DICへと増悪し、6日目に肺出血で死亡した。死亡5日前の血清では、抗R. rickettsii IgMおよびIgG抗体は陰性であったが、血清を用いたPCR法でR. rickettsii DNAが増幅された。

また、5歳の兄から採取した血清では抗R. rickettsii IgMおよびIgG抗体は陽性であった。この家族は低い茂みがある田舎に住んでおり、ダニを有する放し飼いの犬の往来があったが、ダニ刺咬の既往はなかった。

(CDC, MMWR, 53, No.19, 407-410, 2004)

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