ライム病血清診断に関する注意の呼びかけ

(Vol.25 p 208-208)

ライム病は人獣共通のスピロヘータ感染症で、感染症法の対象疾患として4類感染症に位置づけられている。これにより、診断したすべての医師に報告が義務づけられた。1999年4月の本法施行後、2004年第18週までに63例が報告されている。

ライム病起因スピロヘータであるボレリアは、純培養に特殊な培地が必要なこと、増殖が遅いこと、体液(血液等)からの抗原、もしくは遺伝子検出が困難なことから、病原体診断は主に血清診断によって行われている。

1)2ステップ法について

ライム病の血清診断では、1995年に米国CDCが推奨した2ステップ法1)による試験法が米国、欧州各国2)で受け入れられている。これは第1ステップである、Enzyme immunoassay(EIA法)あるいはImmunofluorescent assay(IFA法)など、全菌体に対する抗体反応の相加的な判定では試験の特異性が十分ではないためである。従って、血清診断によりライム病の診断を確定する場合には、第2ステップであるウエスタンブロット(WB)法による確認検査を行うことが必要である。

なお、欧州各国と米国では、判定の基準(WB法での反応抗原の種類、数など)が若干異なる1-4)。

<米国CDCが推奨している2ステップ法1)>

第1ステップ:EIA法あるいはIFA法により試験する。

第2ステップ:EIA法あるいはIFA法で陽性、擬陽性であった検体にはWB法を行い、以下の場合最終的に抗体陽性とする。

I)WB法で主要表層抗原C(OspC)、ボレリア膜タンパク質A(BmpA)、鞭毛抗原のうち少なくとも2つ以上に対してIgM価が上昇していること。

II)WB法で18kDa抗原、21kDa抗原(OspC)、28kDa抗原、30kDa抗原、39kDa抗原(BmpA)、41kDa抗原(鞭毛抗原)、45kDa抗原、58kDa抗原(not GroEL)、66kDa抗原、93kDa抗原のうち少なくとも5つ以上に対してIgG価が上昇していること。

2)血清診断の結果に影響を与える可能性のある因子、疾患、感染症

梅毒、回帰熱などのスピロヘータ感染症、自己免疫疾患(関節リウマチなど)や抗核抗体陽性の場合など、偽陽性になる場合があることが報告されている5-7)。

3)臨床検査ラボによる検査結果について

ライム病の血清診断は、いくつかの国内臨床検査会社で、また、一部の国内臨床検査会社を経由して米国臨床検査ラボでの検査の依頼が可能である。前述の2ステップ法による確認検査が未実施の場合もあり、注意を要する。また、一部診断キットによる検査や、米国臨床検査ラボによる検査では、主に米国で流行している病原体(Borrelia burgdorferi )が試験抗原として用いられている。一方で、国内感染例の場合には、感染種はB. garinii がほとんどであることから、試験の特異性は保たれているが、抗原性の違いに起因する試験感度の低下については不明の部分がある。

確認検査が未実施の場合や、臨床上ライム病が強く疑われ、かつ国内での感染が疑われる場合で、臨床検査ラボでの検査結果が擬陽性の場合(IFA法、EIA法陽性または擬陽性で、ウエスタンブロット擬陽性もしくは陰性など)には、国立感染症研究所・細菌第一部(03-5285-1111内線2224)までご相談ください。

 文 献
1) CDC, MMWR 44(31): 590-591, 1995
2) Robertson J., et al., J. Clin. Microbiol. 38(6): 2097-2102, 2000
3) Hauser U., et al., Clin. Diagn. Lab. Immunol. 5(4): 456-462, 1998
4) Hauser U., et al., J. Clin. Microbiol. 35(6): 1433-1444, 1997
5) Lovece S., et al., J. Rheumatol. 18(12): 1813-1818, 1991
6) Berardi V.P., et al., J. Infect. Dis. 158(4): 754-760, 1988
7) Magnarelli L.A., et al., J. Infect. Dis. 156 (1):183-188, 1987

国立感染症研究所・細菌第一部 川端寛樹 渡辺治雄
国立感染症研究所・感染症情報センター 多田有希 木村幹男

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