1.今回の報告期間は平成16年3月29日〜平成16年6月27日までの約3カ月であり、法定報告に基づく新規HIV感染者報告数は、平成16年1月に報告された194件を更新し199件と過去最高となり、新規AIDS患者報告数は78件で前回を上回った(前回:HIV感染者150件・AIDS患者69件)(前年同時期:HIV感染者135件・AIDS患者81件)。
2.性別に見ると、HIV感染者報告数199件のうち186件(約93%)、AIDS患者報告数78件のうち68件(約87%)を男性が占めている。従って、男性のHIV感染者およびAIDS患者の動向が全体の動向を左右していると理解して差し支えない。
3.感染経路別に見ると、HIV感染者では同性間性的接触によるものが男性125件(感染者全体の約63%)と最も多く、異性間性的接触によるものは55件(約28%、男性45件・女性10件)であった。
一方、AIDS患者では同性間性的接触によるものが男性25件(患者全体の約32%)、異性間性的接触によるものが29件(約37%、男性23件・女性6件)であった。
4.年齢別に見ると、HIV感染者では20代〜30代の占める割合が高く、感染者全体の約72%(144件)を占めている。
一方、AIDS患者では患者分布はHIV感染者より高年齢層に広がっており、30歳以上が71件(約91%)であった。
5.平成16年4月〜6月末までの保健所等におけるHIV抗体検査件数は14,358件、自治体が実施する保健所以外の検査件数は4,251件、保健所における相談件数が29,730件であった(平成15年4月〜6月末までの保健所における検査件数は15,625件、自治体が実施する保健所以外の検査件数は4,001件、保健所における相談件数は34,365件)。
6.平成16年1月〜6月の献血件数(速報値)は2,740,576件で、そのうちHIV抗体・核酸増幅検査陽性件数は45件(昨年同時期22件)、10万件当たりの陽性件数は1.642件であり、増加している。
7.今回の報告では、特にHIV感染者報告数は過去最高となり、中でも「日本国籍の男性の同性間性的接触」による増加が顕著であった。今後、青少年を対象とした予防啓発事業もさらに推進していく必要がある。
8.報告されたエイズ患者は、HIVに感染しても発症するまで受診しなかった人達であり、この数が減少しないということは、検査機会を増やす必要のあることを示唆している。自治体が実施する保健所以外の検査件数は増加傾向にあり、このような検査機会を増やすことに対しての潜在的要求があることを意味している。現在、東京都・名古屋市・大阪市などで時間帯等に配慮した利便性の高い検査相談室等が開設されており、また診療報酬改定により、「HIVの感染に関連しやすい性感染症が認められる場合でHIV感染症を疑わせる自他覚症状がある場合は、本検査を算定できる」こととなったこともあり、自治体においては、保健所やそれ以外での検査を推進するとともに、医療機関での検査の機会についても拡げていくことが望まれる。感染の早期発見により、感染者本人が治療によるメリットを受けることができ、かつ本人が自分の感染を知ることにより次の感染を押さえることに繋がり得る。
9.献血における陽性率が増えているため、血液安全の観点からも、自発的な検査機会の増加が望まれる。