インフルエンザウイルスの抗ウイルス薬耐性に関するNISN(Neuraminidase Inhibitor Susceptibility Network)の指針

(Vol.25 p 239-240)

ノイラミニダーゼ(NA)阻害薬(オセルタミビル、ザナミビル)、およびM2イオンチャンネル阻害薬(アマンタジン、リマンタジン)に対する耐性について、NISNは以下の指針を提示した。

1.パンデミックあるいはエピデミックでのA型インフルエンザウイルスは、M2阻害薬には耐性を示す可能性があるが、NA阻害薬に耐性を示すことは非常に考えにくい。

2.M2阻害薬に対する耐性では、他のM2阻害薬に対する耐性も獲得するが、NA阻害薬に対する耐性では、薬剤の種類とウイルスのタイプ/サブタイプによって様々である。

3.治療中での薬剤耐性の出現頻度は、NA阻害薬よりもM2阻害薬を使う場合の方が大幅に高い。また、両者の群の薬剤につき、成人より小児の方が耐性の出現頻度が高い。

4.M2阻害薬耐性ウイルスは容易に人→人伝播を起こすのに対して、NA阻害薬耐性ウイルスの人→人伝播は確認されていない。

5.M2阻害薬と異なり、NA阻害薬はインフルエンザの合併症の出現を抑えることが示されており、パンデミック間期およびパンデミック期での治療に適していると思われる。

6.治療中での抗ウイルス薬に対する耐性の出現により、ウイルス複製の期間が長くなり、特に免疫不全者においては重篤化する可能性もある。しかし一般に動物モデルでは、NAの変異が生ずると感染性、複製能、病原性が低下する。

7.M2阻害薬耐性ウイルスによる感染が起これば、M2阻害薬による治療的および予防的効果は激減する。これは、NA阻害薬耐性ウイルスが伝播するとの証拠が出てくるようであれば、NA阻害薬にも当てはまる可能性がある。

8.耐性出現の頻度、それと薬剤使用法との関係、耐性出現による結末については、両者の群の薬剤についてさらなるデータが必要である。

9.NISNはWHOインフルエンザ共同研究センターと協力して、一人当たりのNA阻害薬の使用量が最も多い日本で、2003/04シーズンの分離株多数を用いて、NA阻害薬の感受性検査を行っている。

10.将来のパンデミックにおいて、インフルエンザウイルスの抗ウイルス薬耐性が生じるとして、それの臨床的、疫学的に意味するところは十分解明されていない。しかし、NA阻害薬は予防と治療の両方に有効であるはずで、特にNA阻害薬に対する耐性の懸念から、パンデミックに備えての抗ウイルス薬の備蓄をあきらめるようなことがあってはならない。

(WHO, WER, 79, No.33, 306-308, 2004)

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