2003年の英国における、輸血後の重大な副作用に関するサーベイランス結果が発表された。最も多い有害事象は不適合輸血であり、75%であった。また、輸血による感染(TTIs)は1.7%であった。輸血による変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)感染の疑い例(受血者死亡)が報告された。
輸血による感染:全英12カ所の血液センターからTTIsの可能性症例として38例が報告された。24例は調査の結果TTIsから除外され、2例は調査中であり、TTIsが最も疑われるのは8例であるが、8例の内訳はHBVが2例、HIV、HAV、マラリアが各1例、細菌感染が3例であった。HCVは報告がなく、HCV抗体とHCV-RNAの検査は有効であると考えられる。細菌感染は少なかったが、皮膚消毒法の改善や、初めの血液20〜30mlを破棄する方法によるものと考えられる。
HBV:2003年には2例の報告があり、いずれも供血時のスクリーニング検査で陰性であった、急性肝炎初期の血液による感染である。1例目は、供血者が今回の供血時に陽性であったので、以前の供血での受血者を同定し追跡したところ、輸血6カ月後に感染が明らかとなった。2例目は、受血者が輸血5カ月後に急性B型肝炎を発症し明らかになった。1995年よりTTIsとして報告されているHBV感染は9例あるが、うち8例は供血者が急性肝炎に罹患していたためである。以前は、慢性肝炎の供血者からの感染がほとんどであった。
HIV:1996年以来初のHIV感染の報告があった。供血を複数回行っている者がHIV抗体陽性を示したが、直近の供血は2002年に行われており、HIV抗体は陰性であったが、保存検体の検査ではHIV-RNAが陽性であった。その時の受血者を追跡したところ、輸血15カ月後にHIV陽性となった。
HAV:供血6日後に黄疸を生じた者がHAV陽性との報告があり、受血者を追跡したところ、輸血8週間後に急性A型肝炎を発症した。
マラリア:鎌状赤血球症にて複数回の輸血を受けている者で、海外渡航歴が無いにもかかわらず、熱帯熱マラリア原虫が見つかった。供血者は21歳まで西アフリカで生活していたが、その後7年間マラリア流行地を訪れていなかった。この供血者のマラリア抗体は陽性であったが、現在のガイドラインではマラリア抗体測定の対象とはならない。
細菌感染:輸血による細菌感染は血小板輸血を受けた3名で報告され、いずれも重篤であり、1名は死亡している。原因菌は死亡例では大腸菌、他は黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌であった。いずれにおいても、穿刺部皮膚の汚染が疑われている。
vCJD:2003年、1人の受血者が死亡後にvCJDと診断されたが、この受血者は1996年に輸血を受けており、そのときの供血者は2000年にvCJDで死亡している。このとき使用された赤血球製剤は白血球除去を行っておらず、術中に輸血された。ヒトプリオンが輸血により伝播することの証拠はなく、この症例では食事を介して病原体に曝露された可能性を否定できないことから、輸血が原因であると確定するのは不可能である。
(CDSC, CDR Weekly, 14, No.30, 2004)