今夏のヘルパンギーナについて−大阪府

(Vol.25 p 231-232)

2004年の大阪府におけるヘルパンギーナの発生は、感染症発生動向調査事業の患者定点当たりの週別患者数が3.0を超えることはなく、流行規模は前年の1/2以下である。当所では、6〜7月の2カ月間に病原体定点から搬入されたヘルパンギーナ患者114名の咽頭ぬぐい液またはうがい液からウイルスの検出を行った。

患者114名の年齢分布は1〜15歳が大半であったが、成人の患者5名も含まれていた。主な症状は咽頭発赤および発熱であり、患者の最高体温は38℃以下が1名、38〜39.9℃が103名、40℃以上が1名であった。

ウイルス分離はVeroおよびRD-18S細胞を用いて通常の方法で行い、3代まで継代して判定を行った。分離されたウイルスは中和試験で同定した。また同時にRT-PCRによるエンテロウイルスの検出も試みた。方法は咽頭ぬぐい液 250μLからISOGEN-LS(和光純薬)を用いてRNAを抽出し、RT-PCRを行った。用いたプライマーはObersteら(J. Clin. Microbiol. 37: 1288-1293, 1999およびJ. Clin. Microbiol. 38: 1170-1174, 2000)のプライマー 012、 040、 011およびプライマー 187、 188、 189、 222を用いてVP1領域を増幅した。PCR反応は94℃・30秒、51℃・1分、72℃・1分を40サイクル行った。PCR産物はMicrocon遠心フィルター(TaKaRa)でプライマーを除去した後、シーケンス反応に用いた。塩基配列による型同定はデータバンクに登録されたウイルスと75%以上の相同性を保有するものを同じ型であると同定した。

のように現時点で37名からウイルスが検出されている。内訳はコクサッキーウイルス(C)A4が31名から、CB5が2名から、CA9およびCB2が各1名から検出された。また1名はCA4とCB5の重複感染であった。CA4はPCRのみで検出され、培養細胞からはCBのみが分離された。これらの患者以外では眼充血を伴うプール熱様患者2名からCB5が分離された。また5月には脳炎症状の5カ月男児の糞便からもCA4が検出されている。

昨シーズンの大阪におけるヘルパンギーナは、CA10およびCA6が主な原因であり、CA4はわずか1例のみであったが、今シーズンはおそらくCA4単独の流行によるものと予想される。

大阪府立公衆衛生研究所 山崎謙治 左近直美 宮川広実 大竹 徹

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