B型インフルエンザウイルスはビクトリア系統と山形系統に大別される。全国的にB型は、1989/90シーズン以降は山形系統のウイルスが主流であったが、2001/02シーズン以降はビクトリア系統が主流であった1)。しかし、2003/04シーズンは各地で再び山形系統のウイルス分離が多く報告されており2-4)、ビクトリア系統のウイルス分離の報告はまだない。一方、沖縄県においてビクトリア系統のB型は、全国より1シーズン早い2000/01シーズンの5〜6月頃から主流となり5)、その後も2シーズン連続してB型の分離数の96〜97%を占めた。2003/04シーズンにおいても、少数ではあるがビクトリア系統のウイルスが分離されたので報告する。
2003/04シーズンの2〜4月に、患者6名の咽頭ぬぐい液からB型のウイルスがMDCK細胞で分離された。ウイルスの同定には国立感染症研究所からシーズン前に配布されたインフルエンザウイルス抗血清を用いてHI試験(0.75%モルモット赤血球を使用)を行った。その結果、分離されたウイルス6株のうち3株のHI価は、抗A/Moscow/13/98(ホモ価 1,280)、抗A/New Caledonia/20/99 (ホモ価 320)、抗A/Panama/2007/99(ホモ価 1,280)、抗A/Kumamoto(熊本)/102/2002 (ホモ価 160)および抗B/Johannesburg/5/99 (ホモ価 640)に対しては<10、抗B/Shandong(山東)/7/97 (ホモ価40)に対しては10であった。このことから、ビクトリア系統のB型インフルエンザウイルスと同定された。残りの3株のHI価は、すべての抗血清に対して<10であったため、培養上清についてインフルエンザ抗原簡易検出キット(クイックS−インフルA・B「生研」)で検査を行い、B型と判明した。
今回、抗血清に対し反応を示さなかった3株については抗原変異が考えられ、国立感染症研究所での詳細な抗原解析が待たれる。また、2004/05シーズンのワクチン株は山形系統のウイルス株が選定されていることから、今後のビクトリア系統の動向に注目したい。
文 献
1)病原微生物検出情報, Vol.24,281-282, 2003
2)病原微生物検出情報, Vol.25,152, 2004
3)病原微生物検出情報, Vol.25,123, 2004
4)病原微生物検出情報, Vol.25,8-9, 2004
5)病原微生物検出情報, Vol.22, 168-169, 2001
沖縄県衛生環境研究所・微生物室 平良勝也 糸数清正 中村正治 安里龍二