髄膜炎患者からのエコーウイルス30型の分離−福島県

(Vol.25 p 233-233)

2004年3月中旬〜7月初旬にかけて髄膜炎(34症例)および咽頭炎/発疹症(1症例)の患者35症例(3月3、5月8、6月18、7月6)由来の臨床材料からエコーウイルス30型(E30)が検出された。35名中2名は県中地域の郡山市在住の患者であるが、他は中通り地方の南端に位置する白河市およびその周辺在住の患者であった。この県南地域についてみると、3月に2例発生した後2カ月間患者が発生していなかった。このことは、ウイルスがこの地域からいったん消失して再度侵入したことによるのか等原因は不明である。35症例中2症例については住所地が同一であることが確認されたが、その他にも、記載は無いものの、兄弟等と思われる例が数組みられた。患者年齢は4歳〜14歳まで分布していたが、全体の7割近くを7歳以下が占めていた(24/35、69%)。男女比は26:9で男子の罹患者が多かった。35症例の臨床症状は、頭痛、嘔吐を主とし、その他に腹痛、下痢がみられ、咽頭炎、発疹を呈する者もみられた。記載のあった発熱については、37℃台が3名、38℃台が15名、39℃台が11名であった。

35症例由来の臨床材料(咽頭ぬぐい液3、直腸ぬぐい液2、髄液34)をRD-18S、HEp-2、VeroおよびLLC-MK2の4種細胞に接種したが、39件すべての検体からのウイルスは効率良く増殖し、早いもので接種後5日目から、遅くても2代培養終了時点(14日目)までにRD-18S細胞とHEp-2細胞に明瞭なCPEが出現した。LLC-MK2細胞にCPEを示す株もみられたが、他の2つに比較すると判定しにくく、曖昧な印象を受けた。CPEは、細胞の小円形化が細胞全面に波状的に進行した後溶解していくのが認められ、HEp-2細胞では細胞の集塊化が観察された。3代培養したウイルス液の力価は、106〜107TCID50/25μlの範囲にあった。感染研より分与されたEP95とデンカ生研の単味抗血清を用い中和試験を行ったところ、一部ヘテロ抗血清(EP2)による増殖抑制を示す株もみられたが、単味抗血清では完全に中和された。

上記35名の他に、7月中に採取された髄膜炎患者11名由来の検体から、RD-18S細胞とHEp-2細胞にE30類似のCPEを示すウイルスが分離されており、現在同定中である。

福島県における過去のE30分離状況をみると、1997(平成9)年に199症例から分離された後は大きな流行が無く、流行から7年程度経過しており、E30に対する感受性が高い状態にあるものと思われ、特に今後7歳以下での患者が増加することが懸念されるため、県の感染症週報を通じて関係機関に情報を提供し、注意を喚起した。

福島県衛生研究所・微生物グループウイルス検査室
慶野昌明 金成篤子 水澤丈子 結城智子 三川正秀 渡部啓司

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