多様な診断名の検体からのアデノウイルス3型の検出−岩手県

(Vol.25 p 235-235)

2004年6月〜7月にかけて、岩手県内の小児科定点3カ所(いずれも盛岡地区)および眼科定点1カ所(一関地区)において採取された36症例の患者の検体から、アデノウイルス3型(Ad3)が検出された。検出された検体は患者の咽頭ぬぐい液(33検体)、糞便(3検体)、結膜ぬぐい液(2検体)および尿(1検体)であり、3症例については2種類の検体から検出された。検出されたAd3はすべてCaCo-2細胞、HEp-2細胞で分離されたが、一部はRD-18S細胞、Vero細胞にも感受性を示した。中和試験はデンカ生研製アデノウイルス単味抗血清を用いて行った。

2004年3月〜7月に岩手県において検出されたアデノウイルスを表1に示した。これまでの当県におけるアデノウイルスの月ごとの検出は散発的で、検出された月でも数株検出される程度であったが、本年6月(17症例)および7月(19症例)にAd3の検出が急増した。Ad3が検出された検体の臨床診断名および年齢別症例数を表2に示した。36症例のうち27症例(75%)が上気道炎(咽頭炎、扁桃腺炎)で、上気道炎の症例の患者年齢は3歳をピークとし、0〜5歳が82%を占めていた。また下気道炎(肺炎、気管支炎)は、1〜3歳の5症例(14%)のみであった。36症例の臨床症状をみると、発熱(95%)、上気道炎(78%)を呈する症例が多く、次いで下痢(27%)、気管支炎(16%)、結膜炎(16%)、嘔吐(11%)、肺炎(8.1%)、発疹(5.4%)、血尿(2.7%)がこれに次いだ。

岩手県においては、小児科におけるアデノウイルスやエンテロウイルスの流行状況を把握する目的で、上気道炎および発疹症も対象として発生動向調査病原体検査を実施している。患者情報によると咽頭結膜熱の岩手県における患者数は、第25週以降増加し、第32週現在も過去同時期最高のレベルで推移している。今回Ad3が検出された症例の中には咽頭結膜熱は1例のみであったため、咽頭結膜熱の流行との関係は確認できなかった。今後のAd3の検出動向とともに、咽頭結膜熱の患者発生動向にも注目したい。

岩手県環境保健研究センター
高橋朱実 藤井伸一郎 佐藤 卓 齋藤幸一 田澤光正

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