
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は1987年に米国で最初に報告され、その後、ヨーロッパやアジアからも報告されている。日本における最初の典型的な症例は1992年に報告されており、現在までに200人を超える患者が確認されている。そして、このうち約40%が死亡しているという、きわめて致死率の高い感染症である。治療は、早期診断、早期治療が原則で、CHDF(持続的血液濾過透析)などを導入した厳重な循環管理とγ-グロブリン製剤等の投与などの補助療法、壊死組織の広範囲なデブリードマン等の外科的療法、抗菌薬としてペニシリン系抗菌薬の大量投与に加えてクリンダマイシンの併用が第一選択とされている1, 2) 。近年、上気道感染由来のStreptococcus pyogenes でマクロライド系の抗菌薬に耐性の株が世界中で見られている。
そこで、1992年〜2003年に分離された劇症型/重症溶血性レンサ球菌感染症由来株 211株について薬剤感受性試験を行い、その中で得られた耐性株の遺伝学的特徴について検討した。薬剤感受性試験は、エリスロマイシン、クリンダマイシン、アンピシリン、イミペネム、セフォタキシム、シプロフロキサシンの6種薬剤についてE-testを、テリスロマイシンについて微量液体希釈法を用いて実施した。すべての株は、アンピシリン、イミペネム、セフォタキシムに対して感性菌であった。一方、エリスロマイシン、クリンダマイシン、テリスロマイシンおよびシプロフロキサシン耐性株は、それぞれ3.8%、1.4%、1.4%および 0.5%存在した(表1)。また、シプロフロキサシンに対する低度耐性株が10.4%存在することが判明した。
エリスロマイシン耐性株8株についてermA 、ermB 、mef 遺伝子の有無をPCRにより確認したところ、2株はermA 遺伝子を、3株はermB 遺伝子を、残りの3株はmef 遺伝子を保有していることが判明した。ermB 遺伝子を保有する3株は、すべてクリンダマイシンとテリスロマイシン、エリスロマイシンに耐性で、emm 遺伝子型は、emm1 であった。これらの3株のゲノムDNA をSma Iで消化した場合のPFGEのパターンを比較した結果、すべて一致しないが、関連性のある株であることが考えられた(図1)。
文 献
1)清水方可、日本医事新報 4081: 92, 2002
2)中村茂樹他、感染症学雑誌 78: 446-450, 2004
国立感染症研究所 池辺忠義 渡辺治雄
福島県衛生研究所 平澤恭子
富山県衛生研究所 田中大祐
神奈川県衛生研究所 鈴木理恵子
大阪府立公衆衛生研究所 勝川千尋 河原隆二
山口県環境保健研究センター 冨田正章
大分県衛生環境研究センター 緒方喜久代
東京都健康安全研究センター 遠藤美代子 奥野ルミ
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