1990年代、B群レンサ球菌(GBS)感染症予防のための分娩時抗菌薬の予防的使用(以下IAP)が普及したことにより、分娩後7日以内に発症する早期発症型GBS感染症は減少したが、依然として、米国での新生児死亡の原因となる感染症の主要なものであり、また、黒人の新生児は白人と比べてリスクが高い。2002年にCDCと米国産科婦人科学会はGBS 感染症予防ガイドラインの見直し(以下新ガイドライン)を行い、すべての妊娠女性に妊娠後期のGBSスクリーニング(以下スクリーニング)を行い、保菌者にIAPを行うように勧告した。これにより、GBS感染症がさらに減少することが期待される。今回、1999年以降のGBS感染症発生率の推移を、Active Bacterial Core Surveillance(ABCs)/Emerging Infections Program Networkのデータを用いて解析した。
2000〜2003年の間、サーベイランス実施地域(9つの州や市)から総計701例のGBS感染症が報告された。このうち676例(96%)の転帰が分かっており、致死率は6.5%であった。
1999〜2001年の間、GBS 感染症発生率は生存出生1,000あたり0.47とほとんど一定であった。2003年には全体での発生率は0.32であり、2000〜2001年と比較して34%の減少(95%信頼区間=20〜46%)であった。
発生率は、黒人と白人の両集団ともに1999〜2001年では一定であったが、黒人の新生児の方が白人と比べおよそ2倍の発生率であった。2003年には、白人新生児では発生率が生存出生1,000当たり0.26であったが、黒人新生児では0.59、その他の人種では0.16、ヒスパニックでは0.31であった。予防を開始する前の1993年における発生率と比較すると、白人と黒人間の発生率の差は68%(出生1,000当たり0.78)減少した。1998年の時点で、白人新生児においては2010年の米国健康目標(同0.5以下)を達成している。2003年の予備的なデータでは、黒人新生児もこの目標に近づきつつある。
新ガイドラインではスクリーニング方法に関し、新たに検体の抗菌薬感受性検査やGBS細菌尿の報告の取り扱いについて勧告を行った。ABCsは、検査機関の新ガイドライン遵守状況を評価するため、2003年にスクリーニング方法について調査した。2003年6〜8月、検査機関に郵送もしくは電話で質問調査を行った。253機関のうち、211機関(83%)から回答が得られた。
この結果、膣および直腸の両方からスクリーニング目的の検体を採取すること(195/207機関、94%)、選択培地を使用すること(163/183機関、89%)などについては、検査機関における新ガイドライン遵守度が高かった。一方、ペニシリンアレルギーを有する女性から検出されたGBS検体に、抗菌薬感受性検査を行うこと(半数以上の施設で、指示がないと実施していない)、出産可能年齢の女性の尿検体からGBSを検出した場合、細菌数にかかわらず報告すること(121/180機関、67%)などについては、改善の余地が認められた。
(CDC, MMWR, 53, No.23, 501-505 & 506-509, 2004)