スイミングクラブで起こったノロウイルス胃腸炎の集団発生、2004年−米国

(Vol.25 p 267-267)

2004年2月3日、バーモント州健康局(VDH)は小児の急性胃腸炎集団発生の報告を受け、米国CDCとの共同調査を実施した。これらの症例の共通点は、その前の週末(1月31日〜2月1日)にスイミングクラブに参加したことのみであった。1月30日(金)夜〜2月2日(月)昼までのプールの遊泳記録を閲覧したところ、乳幼児を含む7つの私的団体とスイミングクラブの会員がプールを使用していた。各団体から参加者の名簿を入手し、各家庭の成人に電話調査を行った。消化器症状を有する者には便検体の提出を依頼した。症例定義は、スイミングクラブの参加者で、72時間以内に嘔吐あるいは下痢(24時間以内に3回以上の軟便)があった者とした。

集団発生の期間内にスイミングクラブに参加し、情報が得られた者189名(年齢中央値13歳、範囲:5カ月〜73歳)のうち、53名(28%)が症例定義に合致した。53名はクラブに参加してから、中央値で30時間後(範囲:8〜62時間)に発症していた。主な症状は、嘔吐(89%)、下痢(50%)、悪心(77%)、腹痛(68%)、悪寒(58%)、38℃以上の発熱(53%)であった。症例の年齢中央値は7歳(範囲:5カ月〜61歳)で、31名(58%)は女性であった。6名(小児5名と成人1名)は医療機関を受診し、うち成人例は嘔吐が強く入院していた。RT-PCRにより、10名の便検体のうち5検体からノロウイルスが検出された。3検体の株をさらに検査したところ、塩基配列が一致した。金曜日の参加者に症例はなく、土・日曜日の参加者で発症率が高かった。プールでの嘔吐や排便などは報告されず、明らかな汚染源は特定できなかった。金曜あるいは月曜日に比較し、土曜・日曜日に参加したこと(リスク比7.7、95%信頼区間2.0〜30.0)、およびプールに入ったこと(リスク比6.0、95%信頼区間1.6〜23.0)が罹患のリスクを高めていた。

聞き取りから、定期メンテナンス担当者が不在であった土・日曜日に、プールが見た目に濁っていたことが確認された。対策として、日曜の午後になって初めて塩素の追加が行われていたが、月曜日の朝に採取したプールの水質検査で、遊離塩素濃度の低下(0.5ppm;通常1〜4ppm)、pHの低下( 6.8;通常7.4〜7.6)が認められ、消毒が不十分であったことが示された。また、自動塩素添加装置のチューブのねじれが確認され、修理を実施した。月曜の夜には再び塩素の添加が行われ、pHも適正に調整された。火曜日の調査では、消毒装置、プールの水質は国の勧告通りに調整されていたが、職員の訓練や緊急時の対応方針がなかったこと、プールの水質検査結果あるいはメンテナンスの記録がないことが明らかとなった。

(CDC, MMWR, 53, No.34, 793-795, 2004)

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