2004年6月上旬から県北部で検出され始めたコクサッキーウイルスA2型(CA2)は7月に入ってから県中央部から南部へと検出範囲を拡大し、8月20日現在までに32株が分離されている。この間に全県の定点観測病院で採取して乳飲みマウスによるウイルス分離と中和試験を行った検体は、患者咽頭ぬぐい液157検体、糞便111検体である。臨床診断別ではヘルパンギーナと診断された検体からの分離率が最も高く、25検体から12株が分離された。他の疾患では上気道炎が73検体中10株(以下10/73と表記)、感染性胃腸炎が4/81、髄膜炎が3/8、咽頭結膜熱が2/11、発疹症が1/10であった。この成績から、必ずしも典型的なヘルパンギーナの症状を示していない場合であってもウイルスが分離されていることがわかる。また、咽頭結膜熱の2例については同一検体からアデノウイルス2型も分離されている重感染例であった。
感染症発生動向調査のヘルパンギーナの患者報告数とCA2の分離株数を比較すると、両者は図のように重なるのがわかる。CA2以外ではCA4が5株(第24週1株、第25週1株、第26週2株、第32週1株)とCA6が2株(第22週2株)分離されているが、いずれも少数散発にとどまっており、今シーズンのヘルパンギーナの流行は主にCA2によってもたらされたものと考えられた。
当所では一本鎖高次構造多型解析(SSCP解析)を用いることでエンテロウイルス全般の同定作業の効率化を図っているが、今回のケースでは32株のCA2は4種類のSSCPパターンに分けられた。これは代表株4株を同定すれば32株を同定したのと同じ効果が見込めるため、同定効率は32/4で8倍になるものと計算できる。SSCPパターンの内訳を見ると、32株中28株までが同一パターンであったため、実質的には20倍以上の効率化に相当している。このように乳飲みマウスを用いなければ分離が難しいウイルスについては、SSCP解析を組み合わせることで動物の維持管理にかかる手間の軽減にも役立つものと考えられた。
秋田県衛生科学研究所
斎藤博之 佐藤寛子 安部真理子 原田誠三郎 八幡裕一郎 佐藤智子
笹嶋 肇 鈴木紀行