手足口病患者からのコクサッキーウイルスA16型の検出−川崎市

(Vol.25 p 264-264)

川崎市における手足口病の発生状況は例年に比べて1カ月ほど遅く、2004年7月になってから患者が増加し始めた。流行のピークは7月の第5週で、例年に比べて小規模な流行となっている。当所において8月に手足口病を発症した患者の咽頭ぬぐい液5検体が搬入され、そのうち3検体(残りの2検体は検査継続中)からコクサッキーウイルスA16型(CA16)が分離されたので報告する。

この3名(No.30、No.33、No.34)の患者はいずれも本市高津区内の3歳の男児で、8月2日〜6日の期間に同一の医療機関を受診しており、地域的な流行が考えられた。検体をVeroおよびCaCo-2細胞に接種したところ、両細胞で明瞭なCPEが認められた。増殖したウイルスについて、国立感染症研究所から分与されたCA16とエンテロウイルス71型(EV71)の抗血清による中和試験を行ったが、中和されず判定することはできなかった。そこで、篠原ら(感染症学雑誌 73: 749-757, 1999)のプライマー(P2、E33)を用いたRT-PCRを行い、シーケンサーにより塩基配列を決定し、構造遺伝子のVP4(207bp)領域についてBLAST検索で同定を試みた。また、山崎ら(感染症学雑誌 75: 909-915, 2001)の方法による血清型別が可能なRT-PCRについても併せて行った。

シーケンスの結果、VP4遺伝子の相同性はNo.30とNo.33で 100%(207/207)一致した。しかし、No.30とNo.34は相同性94.7%(196/207)で配列の違いが見られたが、アミノ酸に置換したところ3検体は 100%一致した。BLAST検索の結果、No.30とNo.33はAB094772(CA16/Kanagawa/V-15487/98)と97.6%(202/207)、No.34はAJ297109(CA16/Epsom/15290/99)と99.0%(205/207)一致した()。また、血清型別RT-PCRではCA16特異的プライマーでのみ増幅が認められ、3検体ともCA16と同定された。

近年、CA16とEV71の難中和性が多く報告され、当所においても手足口病については2年前からVP4遺伝子の相同性を比較することで同定を行っている。しかし、系統樹解析や相同性検索ができる利点があるものの、手技の煩雑さ、高コストなどの欠点もある。今回用いた血清型別RT-PCRはCA16遺伝子を特異的に検出することが可能であり、血清型別のみの検索であれば、簡単かつ迅速に検査を行えるものと考えられる。

川崎市衛生研究所 清水英明 奥山恵子 植田葉子 平位芳江 小川正之

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