エンテロウイルス71型の分離−札幌市

(Vol.25 p 263-264)

2004年4月〜9月28日現在までに、札幌市の感染症発生動向調査事業において検体が採取された353名中5名の咽頭ぬぐい液からエンテロウイルス71型(EV71)が分離された。

今シーズン最初のEV71の分離は7月5日(第28週)に採取された手足口病患者の咽頭ぬぐい液からで、7月に4株、8月に1株分離された。臨床診断名は3名が手足口病、2名が急性上気道炎で、髄膜炎などを合併した例はなかった。うち手足口病と診断された1例については同じ検体からKB細胞でアデノウイルス2型も分離された。年齢は0〜4歳が3名、5〜9歳が2名であった。

ウイルス分離にはRD-18S、KB、HeLa細胞を用い、すべてRD-18S細胞により分離された。中和試験は、国立感染症研究所から分与されたEV71抗血清を用いて行った。

手足口病の主な原因ウイルスはEV71とコクサッキーウイルスA16 型(CA16)であるが、現在まで本市では手足口病患者からCA16は分離されておらず、今シーズンの手足口病の流行は、主としてEV71に起因するものと考えられた。

全国的には2003年にEV71による手足口病の大きな流行が見られたが、今シーズンについてはEV71の分離数は少なく、CA16が手足口病原因ウイルスの主流となっている。本市における昨シーズンの手足口病の傾向としては、特に大きな流行は見られず、手足口病患者からEV71が1株分離されただけであった。

2004年の札幌市における手足口病の患者報告では、定点当たりの報告数は第20週(5月10日〜16日)から増加しはじめ、第30週(7月19日〜25日)の4.0をピークにその後減少傾向となった(図1)。2003年の定点あたり患者数のピークは、第29週の3.8であり、本市においては昨シーズンと同様の流行規模であった。また第36週(8月30日〜9月5日)以降、定点からの手足口病患者の報告が若干増えており、9月に入っても検体が搬入されていることから、今後の動向に注意が必要である。

札幌市衛生研究所
宮北佳恵 菊地正幸 吉田靖宏 土屋英保 大川一美 藤田晃三

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