今冬のインフルエンザ総合対策および新型インフルエンザ対策

(Vol.25 p 287-288)

1.今冬のインフルエンザ総合対策について

今冬のインフルエンザ対策については、<栄養、睡眠、予防接種で三位一体。インフルエンザ予防>という標語を掲げて、2004年10月25日をキックオフデーとし、国および都道府県等において総合的な対策に取り組む。具体的な対策は以下のとおりである。

 (1)インフルエンザ予防ポスターの作成・配布

 (2)「インフルエンザ Q&A」の作成・配布

 (3)施設内感染防止対策の推進

 (4)インターネットホームページの開設:Q&A等の他に、1)患者発生の週間情報、2)インフルエンザ様疾患発生による学級等閉鎖情報、3)迅速性に重点を置いた毎日の流行情報、4)関連死亡情報等の発生状況調査について、準備ができ次第逐次掲載する(http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1112-1.html)。

 (5)相談窓口の設置:NPO法人バイオメディカルサイエンス(バムサ)においてインフルエンザ等相談窓口を開設する。開設時期などは以下のとおり。

・開設時期:2004(平成16)年10月25日〜2005(平成17)年3月25日
・対応日時:月曜日〜金曜日(祝日除く)
9:30〜17:00
・電話番号:03-3200-6784
・FAX番号:03-3200-5209
・E-mail:inful@npo-bmsa.org
 (6)予防接種の推進:例年、予防接種法に基づき、予防接種勧奨を行っているところであるが、今年も、特に、高齢者の方については、重点的に接種を勧奨する。

 (7)ワクチン・治療薬等の確保

ア.インフルエンザワクチン:今冬のワクチンについては、昨シーズン使用量の1.4倍となる2,061万本(1ml換算)の供給が予定されており、そのうち100万本のワクチンを不足時の融通用として確保することとしている。また、都道府県と協力して、医療機関等へのワクチン納入等について調整を行う。

イ.抗インフルエンザウイルス薬:リン酸オセルタミビルについて、今シーズンは約1,500万人分の確保ができる予定である。

ウ.インフルエンザ抗原検出キット(迅速タイプ)の供給:インフルエンザ抗原検出キット(迅速タイプ)の供給量については、約1,800万人分の供給ができる予定である。

 (8)その他:他の患者への感染拡大の防止のため、咳などの症状を有する方が医療機関を受診する際は必ずマスクを着用するよう、呼びかけることとする。

 2.新型インフルエンザ対策について

 (1)委員会の設立とその目的:厚生労働省では、1997(平成9)年に「新型インフルエンザ対策検討会」を設置し、報告書をとりまとめたが、その後、ワクチンの生産・接種体制の整備、迅速診断キットや新薬の開発と普及、サーベイランス体制の整備など、平常時のインフルエンザ対策は大きく進歩した。これらの知見の集積と対策の積み上げを基に、新たな施策を検討するため、2003(平成15)年10月、厚生科学審議会感染症分科会感染症部会の下に、「新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会」(座長:廣田良夫・大阪市立大学大学院医学研究科教授)を設置し、報告書を2004(平成16)年8月にとりまとめた。この報告書では、新型インフルエンザウイルス出現時に、公衆衛生的な介入により感染拡大を可能な限り防止し、健康被害を最小限にとどめるとともに、社会・経済機能の破綻に至らせないことを目的としている。

 (2)報告書の主な内容
1)新型インフルエンザに対する状況別対応の設定:本報告書では、新型インフルエンザの発生に対し、迅速かつ的確な対応ができるよう、新型インフルエンザが「海外で発生した場合」、「国内で発生した場合」などのように、あらかじめ発生状況を想定し、各状況に応じた対応を定めた。新型インフルエンザが海外で発生した場合の主な対応としては、「必要に応じて、新型インフルエンザを指定感染症および検疫法を準用する感染症に指定すること」、「発生地域への渡航延期勧告や検疫の強化などを行うこと」などがある。

2)患者数の試算とそれに備えた準備:米国等でインフルエンザ大規模流行対策の基礎として採用されている算定式を用いて患者数を試算した結果、医療機関を受診する患者が1,700万人(最小1,340万人〜最大2,500万人)であることが推計された。報告書では、この試算を基に、現在、国内の供給体制において確保することが可能なノイラミニダーゼ阻害剤を含め、官民併せて 2,500万人分の抗インフルエンザウイルス薬の確保が必要であることが指摘された。

3)ワクチンに関する検討:新型インフルエンザに対応し開発すべきワクチンについて、その開発状況と開発の方向性を検討した。具体的には、ワクチンの生産や供給が安全かつ迅速に行われるための体制の整備や新しい技術の取得等を着実に実施することなどがある。

 (3)報告書を受けた国の主な対応:新型インフルエンザに対する危機に対応するため、本報告書に基づき、着実な準備をすすめることが重要であり、現在、以下のことを実施する予定である。
1)新型インフルエンザ対策報告書の周知:新型インフルエンザが発生した際に対応する地方自治体等の関係者に本報告書を幅広く周知し、確実な対応の実施をめざす。

2)治療薬の確保:来シーズンについては、製薬会社において、インフルエンザ流行シーズンを通して相当量の治療薬を確保する意向が確認されている。これを踏まえ、製薬会社が確保している量を超える治療薬について、国および都道府県等において5か年計画で備蓄することとし、国の備蓄に要する経費を平成17年度予算において概算要求をしている。

 3.ワクチンの開発等

現在、厚生労働科学研究により「新型インフルエンザ用ワクチンの有効性・安全性に関する研究」、「インフルエンザパンデミックに対する危機管理体制と国際対応に関する研究」といった研究を補助しており、今後とも、新型インフルエンザワクチンの開発を支援していく。

報告書の全文については、厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/topics/2004/09/tp0903-1.html)を参照されたい。

厚生労働省結核感染症課

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