9月におけるAH3型インフルエンザウイルスの分離−大阪府箕面市

(Vol.25 p 290-291)

2004(平成16)年9月21日に池田保健所管内の感染症発生動向調査病原体定点病院小児科を受診した箕面市在住の5歳男児の鼻腔ぬぐい液からAH3型インフルエンザウイルスを分離したので報告する。

患者はインフルエンザ様疾患を疑って受診し、病院でインフルエンザ迅速診断キットの結果が陽性となったため、検体が公衆衛生研究所に搬入された。検体は、MDCK細胞に接種され、初代培養で細胞変性効果(CPE)を認め、ウイルスの増殖性を確かめるため継代培養された。2代培養でCPEが十分出現したところで、0.7%ヒトO型血球を用いてHA価 128を認めたので、昨シーズン国立感染症研究所から配布されたインフルエンザ検査キットを用いてHIテストを実施した。その結果、このウイルスは、AH1型の抗A/New Caledonia/20/99、抗A/Moscow/13/98、およびB型の抗B/Johannesburg/5/99、抗B/Shandong(山東)/7/97には全く反応せず、抗A/Panama/2007/99(H3N2)に対しては≦10(ホモ価 5,120)を示したが、抗A/Kumamoto(熊本)/102/2002(H3N2)に対しては640(ホモ価 2,560)を示した。さらにAH3型に特異的なプライマーを用いたRT-PCRで特異バンドを確認したので、今回分離されたウイルスは、AH3型インフルエンザウイルスと同定した。

疫学情報としては、この患児が通っていた豊中市内の幼稚園では、同時期に10名以上の欠席者があり、その欠席児童のうちの1人は、同じくこの病院でインフルエンザ迅速診断キット陽性であった。発症後1週間を過ぎたが、9月30日現在、この地域で流行が拡大しているという情報は得られていない。

9月下旬はインフルエンザとしては非流行期であり、このウイルスの由来および10月以降における動向は非常に気になるところではあるが、現在、大阪府でインフルエンザの流行の兆しがあるとは言い難く、このウイルスが来たるべきインフルエンザシーズンの主流行株になるか、あるいはこの夏の一過性の出現で終わるかは、残念ながら予測できない。しかしながら、最近はインフルエンザ迅速診断キットの普及も相俟って、非流行期におけるインフルエンザウイルスの存在が関心を集めるようになってきている。非流行期におけるインフルエンザウイルスに対する情報が多数得られるようになれば、流行予測がより一層正確なものとなると考えられる。

大阪府立公衆衛生研究所・感染症部 加瀬哲男 森川佐依子 宮川広実 奥野良信
箕面市立病院・小児科 溝口好美 岩城 大 山本威久

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