2004年9月上旬に発生したノロウイルスによる食中毒−青森県

(Vol.25 p 299-300)

2004年9月10日例年になく早い時期に、青森市内のN飲食店においてノロウイルス(以下NV)による食中毒の発生があったので、報告する。

青森市内の医療機関から、嘔吐、下痢、発熱(39℃)を主症状とする食中毒様症状 を呈している患者4人を診察したとの届出が9月13日に青森保健所にあった。

保健所では、食中毒と感染症の両面から患者からの聞き取り調査を行った結果、青森市内のN飲食店での11日の宴会での喫食が原因と推定した。11日の利用状況調査結果では、予約宴会が6グループ49人と当日客22人で計71人の利用客があった。調査可能であった利用客では、49人中発症者45人(うち通院40人)で、調理従事者では11人中発症者6人(通院5人)であった(表1)。

検査結果は、14日の最初に搬入された検体が、調理場のふきとり5検体(包丁、まな板、シンク、冷蔵庫、トイレ手洗い)、食品1検体(カツオ)、発症者便11検体(調理従事者便4検体)、非発症調理従事者便3検体で、発症者全員の便からNV遺伝子genogroup (G)IIが検出された。そのうちの調理従事者3人と非発症者1人からGIとGIIの両方が検出された。調理場のふきとりと食品ではNested PCRとリアルタイムPCRを実施したが、NV遺伝子は検出されなかった。翌15日には、発症者便11検体(調理従事者便2検体)と非発症調理従事者便2検体が搬入され、13検体中12検体からNV遺伝子が検出された。GI、GIIの両方検出されたのが6検体、GIIだけが6検体であった。発症、非発症の調理従事者4検体では、GI、GII両方が1検体、GIIだけが3検体であった。電子顕微鏡によるウイルス検索では、27検体中12検体でNV粒子が確認された。細菌検査は、すべて陰性であった。

今回の事例においては、調理従事者3人と飲食店スタッフ1人が10日夜〜11日朝にかけて発症しており、そのうちの1人が11日の調理作業に従事し、また、非発症調理従事者5人中3人からNV遺伝子が検出され、不顕性感染状態で調理作業に従事し、食品を汚染したものと考えられた。

一方、保健所では疫学的調査を進めるとともに、調理従事者には、自主検査によりNV陰性を確認してから作業に従事するよう指導し、拡大、続発等の二次感染を抑止した。

今回検出されたNVが5、6月に検出されたNVと類似株かどうか解析を行い、また、これからNV流行のシーズンに入り、類似株が出現するのか、NVの動向に注意している状況である。

青森県環境保健センター・微生物部
三上稔之 石川和子 小笠原和彦 阿部幸一
青森保健所・生活衛生課
棟方美穂子 冨吉篤弥 長峰光泰 小田桐和枝 小山田博也 小比類巻秀美

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