さやえんどうに関連したサイクロスポーラ症集団発生、2004年−米国・ペンシルベニア州

(Vol.25 p 342-342)

2004年6月〜7月にかけてペンシルベニア公衆衛生当局は、ある居住施設内でのサイクロスポーラ症発生の報告を受けた。複数の患者の便検査により、CDCにてCyclospora cayetanensis 感染症が確定された。調査により、感染は、この施設で5月末〜6月末にかけて行われた5回のイベントで調理、提供された生のグアテマラ産さやえんどうの摂食に関連していたことが判明した。本報告は、さやえんどうによるサイクロスポーラ症集団発生の初めての報告である。

症例は、この施設の5回のイベントのいずれかで喫食をした後、1〜14日以内に消化器症状などを呈した者と定義した。感染の可能性があった349人のうち315人(90%)にインタビューを行ったところ、96人が症例定義に合致した。そのうち、40例が検便検査でサイクロスポーラ症と確定された。全症例がイベントに関連していたこと、5回のイベントすべてで症例が発生していたことから、イベントすべてに共通して提供され、かつ、イベント以外の食事に提供されなかった食品に注目したところ、パスタサラダのみがこの条件を満たした。また、パスタサラダは、後方視的コホート研究にて、罹患と統計学的に有意な関連が認められた唯一の食品であった(相対危険度:32、95%信頼区間:5〜 219、p<0.001)。5回のイベントのうち2回についてみると、潜伏期間の中央値はそれぞれ8日、7日であった。パスタサラダの材料で、唯一さやえんどうだけが次のすべての基準を満たしていた。1)5回のイベントで提供された3バッチのサラダすべてに用いられたこと、2)同一ロットであったこと、3)イベント以外の食事には供されなかったこと、などである。使用されたさやえんどうは、5月21日に購入、その後冷蔵保存されていた同じコンテナのものであった。7月22日、残りのさやえんどうは廃棄されたため、検査用サンプルは入手できなかった。米食品医薬品局(FDA)により、さやえんどうはグアテマラの輸出業者まで遡ることができた。FDA、CDCはグアテマラ当局と協力して汚染源、汚染経路の調査を実施中である。さやえんどうは、調理の当日に約1kgずつ保管庫から取り出され、水道水で洗浄後サラダに加えられた。3回目のサラダ調理担当者1人が症状を呈していたが、発症はその前のサラダ喫食後であった。その他の調理担当者に症状はなかった。

これまで、様々な食品によるサイクロスポーラ症が報告されているが、汚染様式はいまだ解明されていない。サイクロスポーラの生物学、疫学などのさらなる理解が必要である。輸入食品が関連する場合には、国際協力が欠かせない。食品の洗浄で感染の危険は減るであろうが、完全に予防することは難しい。長引く下痢や反復する下痢では、本症を疑って検査をすべきである。治療として、ST合剤が有効と報告されている(成人でTMP 160mgとSMX 800mgを1日2回、1週間内服が標準)。サルファ剤にアレルギーがある場合の代用薬は分かっていない。

(CDC, MMWR, 53, No.37, 876-878, 2004)

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