腸管出血性大腸菌O103:H2がO26集団感染施設の園児から分離された事例−仙台市

(Vol.25 p 341-341)

2004年7月末〜8月にかけて仙台市内の1保育園において発生した腸管出血性大腸菌O26:H11集団感染事例で前述の保育園の1名の園児から、O103:H2(VT1産生)株が同時期に分離されたので概要を報告する。

感染者の1歳の女児はO26:H11集団感染事例の検査において、8月5日採取の糞便ではO26陰性であった。しかし、その後下痢症状が現れたため、8月19日に糞便を再採取してO26の検査を行った。O26の検査は、糞便検体をcefixime-telluriteサプリメントと1%ラムノース入りマッコンキー寒天平板(CT-RMAC)ならびにDHL寒天平板への直接塗抹と、novobiocin (-) mEC増菌培地で増菌後CT-RMACに塗抹培養した平板からのコロニーの釣菌ならび同定に併行して、増菌培地ならびに釣菌コロニーに関してVT遺伝子のPCRによるスクリーニングを行った。

その結果、CT-RMAC上ではO26様のコロニーは得られなかったが、増菌培地のPCRにおいてVT1遺伝子陽性となったため、DHL平板より大腸菌様のコロニーを釣菌し、PCRによりスクリーニングを行い、VT1遺伝子陽性株を分離した。分離株の主要な性状は、VT1遺伝子陽性、VT1蛋白産生で、簡易同定キット(BD BBL CRYSTAL E/NF同定検査試薬)により大腸菌と同定された(表1)。しかし、O抗原に関しては市販の病原大腸菌の血清(デンカ生研)には反応するものが存在せずUTとなったため、国立感染症研究所に精査を依頼したところO103であることが判明した。

今回の検出例は、通常の腸管出血性大腸菌O26の培養検査のみを行っていた場合には拾い落とされていたケースと考えられた。PCRによるスクリーニングを培養検査と併行して実施していた結果、明らかとなった感染例であり、遺伝子検査により検査項目以外の病原菌の検出も可能であることを示す結果となった。なお、O26感染者も含めて今回検出されたO103感染例はこの1例のみであった。

仙台市衛生研究所
沼田 昇 星 俊信 高畑寿太郎 熊谷正憲 吉田菊喜

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