ノロウイルス(NV)による感染性胃腸炎の集団発生事例は2004年の春先まで、大阪市だけでなく全国的に見られたが、2004年10月にも大阪市内の病院においてNVによる感染性胃腸炎の30名の集団発生事例があったので報告する(今春の大阪市報告事例はhttp://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr2933.html参照)。
集団発生事例の概要は表に示した。10月18日〜22日にかけて大阪市内のA病院において集団発生が認められた。患者は主に小児科の入院患者でその初発症状は嘔吐16名、下痢9名、嘔気2名、腹痛2名、不明1名であった。症状は嘔吐を呈したもの26名(中央値3.0回)、下痢19名(水様便:12名、軟便7名、中央値2.0回)、発熱は27名(最高39.1℃、中央値38.1℃)、腹痛16名、頭痛6名であった。6名の患者糞便材料について食中毒菌およびNVの検査を行ったところ、4名からgenogroup II(GII)NVが検出された。
今回の事例については、他病棟を含む患者の喫食調査等の疫学調査の結果、食中毒ではないと判断され、人から人へ感染が拡がった事例であると考えられた。本事例においては感染拡大防止のため、保健所と当該区保健福祉センターが連携を密にし、施設内の消毒、本疾病が疑われる患者の吐物や糞便の適切な処理、手洗いの励行などの衛生指導を速やかに行うことにより、施設における流行は短期間に終息した。
小児におけるNV胃腸炎は秋季から増加してくるため、これからの季節はNVによる胃腸炎の集団発生に注意する必要がある。大阪市保健所は社会福祉施設に対する講演会やホームページ、広報誌、リーフレット、放送媒体等により広く市民に注意を呼びかけている他、マニュアルを整備し今冬の流行に備えている。
最後に本事例に関して疫学等の情報収集に協力していただいた当該区保健福祉センター各位に深謝いたします。
大阪市保健所感染症対策課
桑原 靖 松井廣一 井上浩司 藤野靖子 吉田英樹
大阪市立環境科学研究所
入谷展弘 改田 厚 久保英幸 小笠原 準 村上 司