海外渡航者からのコクサッキーウイルスA24型の分離−大阪市
(Vol.26 p 16-16)

海外からの帰国後に流行性角結膜炎を発症した患者から、コクサッキーウイルスA24型(CA24)を分離・同定したので、以下に報告する。

患者は45歳の男性で、2004年9月20日にフィリピンから帰国した(滞在日数不明)。9月21日の朝から、左眼に腫脹および異物感を覚え、午後に近医を受診した。受診時の臨床症状は、左眼の著明な眼瞼結膜の充血、著明な乳頭増殖およびわずかな腫脹であった。出血斑は認められなかった。これらの症状は発病後8日には軽度の充血を残すのみとなり、初診症状の割には経過が短かった。

当患者左眼結膜ぬぐい液をRD-18S、VeroおよびFL細胞に接種してウイルス分離を試みたところ、RD-18SおよびFL細胞にエンテロウイルス(EV)様の細胞変性効果が認められた。各細胞分離ウイルスについて、抗EVプール血清(デンカ生研およびEP-95)を用いたウイルス中和試験を行ったが、試験は不成立であった。また、引き続き行った電子顕微鏡観察では、ピコルナウイルス様粒子が認められた。次に、EV遺伝子の5'非翻訳領域からVP2領域を標的としたRT-PCRを行ったところ、約750bpのEV特異的フラグメントの増幅が認められた。このフラグメント中のVP4遺伝子の塩基配列(207bp)をダイレクト・シークエンス法で解読し、得られた塩基配列についてBLAST2検索(http://blast.genome.jp/ )を行ったところ、CA24に最も相同性が高かったことから、本分離ウイルスはCA24と同定された。また、本分離ウイルスのVP4遺伝子の塩基配列は、CA24変異株であるChoshi/1/89 (accession #:AB053984)およびLioning/1/88(同AB053982)と、それぞれ90.8%および88.9%の相同性を示し、また、CA24標準株であるEH24/70(同D90457)と82.6%の相同性を示したことから、本ウイルスはCA24変異株であることが示唆された。

CA24変異株は、エンテロウイルス70型とともに急性出血性結膜炎の原因ウイルスとされ、当所では今回が初の分離例となった。今回の患者は海外からの帰国翌日に角結膜炎症状を呈したことから、日本国内での感染例ではないものと思われた。

大阪市立環境科学研究所 久保英幸 入谷展弘 改田 厚 村上 司
医療法人阿部眼科医院  阿部圭助

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