オランダの鳥インフルエンザA/H7N7の最終行政報告が最近公表された。オランダでは2003年3〜5月の期間、ヒトにおける鳥インフルエンザ感染の空前のアウトブレイクが発生した。流行期間中に、PCRにて養鶏場従業員86例、家禽との接触のない3例に感染が確認された。主症状は結膜炎であったが、家禽と密接な接触のあった獣医師1人が呼吸窮迫症候群に陥り、死亡した。
アウトブレイクのフォローアップとして質問票調査が実施された。約400人の従業員とその家族、流行の制圧作業に従事した900人が対象となった。うち500人から、鳥インフルエンザウイルス感染の確認のために血液が採取された。さらに、25人の感染者の家族62人に対しても調査が実施された。通常の血清学的検査では、鳥インフルエンザウイルスによる結膜炎確定患者からさえも、抗体は検出されなかった。鳥インフルエンザウイルスが七面鳥より馬の赤血球によく結合することを利用し、赤血球凝集検査を改良したところ、感染家禽に接触した者の少なくとも50%にH7抗体が検出され、これによりA/H7N7ウイルス感染は少なくとも1,000人、おそらくは2,000人もの人々に起こったと推定された。感染家禽と接触のない、養鶏場従業員感染者の家庭内濃厚接触者におけるH7抗体の抗体陽性率は、59%であった。このことは、鳥インフルエンザ感染のリスクが家禽との直接接触者に限定されるものでなく、広範囲に人→人感染が生じたことを示唆している。
最近インフルエンザワクチンを接種した100例の対照者の血清が陰性であったことで、この検査の特異度は確認された(特異度100%)。また、この特異度はさらにコホート研究の結果でも支持された。すなわち、抗体陽性と結膜炎に関連が認められ(相対危険度1.72、95%信頼区間0.99〜2.99)、曝露を受けた者の中で予防的に抗ウイルス薬を服用した者での抗体陽性率が低かった(修正オッズ比0.48、95%信頼区間0.25〜0.89)。
養鶏場従業員および流行制圧作業従事者ともに、感染予防策を十分には守らなかった。従業員で、感染家禽の取り扱いの際に絶えずマスクを着用したのはわずか6%であり、常にゴーグルを着用したのは1%のみであった。屠殺作業者では、感染予防策の遵守状況はやや改善していた。疫学的研究が示唆するところは、オセルタミビルの服用で特異的な症状を伴わない感染のみならず、結膜炎をも防御したこと(修正オッズ比0.14、95%信頼区間0.08〜0.27)である。ゴーグルと口−鼻マスクについては防御効果は明らかでなかった。
(Eurosurveillance Weekly, 10, Issue 1, 2005)