2004年12月まで(第1〜48週)に、アイルランド国家疾病サーベイランスセンター(NDSC)に284例の流行性耳下腺炎症例が報告された。これは285例が報告された1997年以来、最多の報告数であった。2004年は第43週まで週あたり0〜7例(中央値1)の報告であったが、第44週に54例と急激な増加を見せた。症例の76%は15〜24歳の年齢層であったが、その年の初期にはこれらの年齢層は38%を占めていたにすぎない。また、このような症例数の急増および年齢分布のシフトは、11月以降に全国の高等学校・大学で起きた複数の集団発生の結果である。
アイルランドのサーベイランスデータによれば、流行性耳下腺炎は7〜8年ごとに流行している。欧州血清疫学ネットワーク(ESEN2)計画のデータによれば、15〜24歳の年齢層で自然獲得、またはワクチンにより免疫を有している者は80〜85%である。この比較的低い免疫保有率は、MMR ワクチンにより野生ウイルスへの曝露が減少したことの反映の可能性がある。アイルランドでは1988年に、12〜15カ月齢の幼児を対象にして、MMRワクチンが予防接種プログラムに導入された。1992年には、11〜12歳のすべての学童に接種が勧奨された。
現在の集団発生で最も多く発症した年代には、イングランドやウェールズの状況と同様に、おそらくMMRワクチンを学校で1回接種されただけの人たちが含まれている。
集団発生制圧のための国家チームが編成され、以下の戦略が決定、実施された。
・集団発生が起きた大学の学生を対象とした、MMR接種キャンペーン
・集団発生が起きていない大学の学生については、機会をみて一次保健サービス機関におけるワクチン接種の勧奨
・学生・コミュニティーへの流行性耳下腺炎に関する情報提供
・サーベイランスの強化
・医療機関に対する、全症例の報告と検体採取およびNational Virus Reference Laboratoryへの送付の奨励
・10月中旬以降の報告症例すべてに関する、さらなるデータ収集
・症例の濃厚接触者(特に25歳未満)に対するMMR接種の勧奨
・医療機関や保育所で症例が発見された場合、公衆衛生領域の職員に加え、産業衛生および感染制御担当職員の動員
(Eurosurveillance Weekly, 8, Issue 52, 2004)