DPTワクチン接種のモニタリング

(Vol.26 p 67-68)

はじめに

サーベイランスは感染症の蔓延防止および予防に役立てられている。欧米では、1960年代にアメリカでポリオワクチンのモニタリングが行われ、ポリオ撲滅につながったことが報告されている1)。ワクチン接種においてもサーベイランスは有効であると考えられた。これまで、わが国では3歳児健康診査(3歳児健診)や予防接種台帳を用いて定期予防接種の把握を行ってきた。しかしながら、予防接種法の一類疾病および結核予防法で定められているワクチンの継続的なモニタリングとして活用されていないのが現状である2)。従って、経年的なワクチン接種割合の比較やワクチン接種の有無と対象疾患の罹患有無との関連についての検討を十分に行うことができない。そこで、2004年4月から秋田県において予防接種法の一類疾病のワクチン接種および結核予防法で定められているBCGに関する継続的なモニタリングを実施することを目的にモニタリングを開始した。本報ではモニタリングから得られたデータからワクチン接種割合およびワクチン接種と百日咳の罹患について記述統計による検討を行った。

対象と方法

対象者は秋田県内で協力の得られた18市町村で2004年4月〜12月までに3歳児健診参加児の保護者とした。調査方法は対象者に事前に質問紙を配布し、母子手帳に記述されたワクチン接種歴、罹患歴等を参照しながら記入してもらい、3歳児健診時に回収した。回収率は92.0%(1,094/1,189)であった。性、出生順位、予防接種歴、百日咳の罹患歴、罹患日のどれか1つでも未記入の項目がある者は解析から除外した。

結 果

質問紙の記入者は母親が1,029人(96.8%)であった。記入者が母親である場合の平均年齢は32.9歳(SD:5.2歳)であった。表1に対象児の属性を示した。対象児は男児が532人(50.3%)、女児が526人(49.7%)であった。出生順位は第1子が541人(51.1%)、第2子が407人(38.5%)、第3子および第4子が110人(10.4%)であった。3歳児健診までの間に接種可能なDPTワクチンの接種状況はDPT1期1回目の接種が1,009人(95.4%)、DPT1期2回目の接種が998人(94.3%)、DPT1期3回目の接種が978人(92.4%)、DPT1期追加の接種が885人(83.6%)であった。罹患者は10人(0.9%)で、それぞれの罹患年齢は生後1カ月、2カ月、3カ月、4カ月がそれぞれ1人、生後5カ月が4人、生後22カ月が1人、生後34カ月が1人であった。

百日咳罹患児のDPT1期1回目の接種状況をみると(表2)、生後4カ月に接種した児2人が生後5カ月に百日咳を罹患していた。また、生後34カ月に接種した児1人が百日咳を罹患していた。DPT1期2回目、3回目および追加後の罹患者はいなかった。

まとめ

DPT1期のワクチン接種割合は1回目〜3回目までは90%以上であった。1回目のワクチン接種以前に罹った児が7人で、ワクチン接種後に罹った児が3人であった。

文 献
1) Rothman KJ, Greenland S, Modern Epidemiology Second Edition, Lippincott Williams & Wilkins, 1998
2)八幡裕一郎, 他, 九州農村医学会誌 9: 5-16, 2000

秋田県衛生科学研究所 八幡裕一郎 佐藤智子 鈴木紀行
秋田県福祉保健部 佐々木 梢 柳原 清

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