病院に関連した百日咳の集団発生、2003年−米国・ケンタッキー、ペンシルベニアおよびオレゴン州

(Vol.26 p 75-75)

百日咳の集団発生は学校や福祉施設など様々な状況での報告があるが、軽症例や非典型例があること、迅速で確実な診断法がないことから、集団発生の把握およびコントロールが困難となっている。以下に3つの病院での集団発生事例を紹介するが、医療従事者間で集団発生が起こった場合は特に注意が必要である。また、原因不明の急性呼吸器疾患の診療に当たっては、感染予防策を行うことが重要である。

ケンタッキー州:妊娠26週で出生後入院していた2カ月齢の新生児が、2003年8月初旬咳と無呼吸を呈し、NICUへ運ばれて人工呼吸器管理となった。10日後、鼻咽頭分泌液(NP)のPCRで百日咳菌が確認され、アジスロマイシン(AZM)が投与された。NICUでは飛沫感染予防策が取られた。

8月中旬にマスクを着用せずにこの乳児を診察していた妊娠中のレジデント医師は、接触9日目以降に鼻汁、咳を呈し、AZM予防内服を勧められたが断った。発症4日後のNPでPCR陽性となり、百日咳菌も分離された。

乳児患者の感染源は、その発症前に3週間ほど百日咳様の咳をしていた新生児室の看護師4名のうちいずれかと考えられた。4人のNPではPCR、培養ともに陰性であったが、3人は抗百日咳菌毒素抗体価が診断基準を満たすレベルまで上昇していた。調査で濃厚接触者と判明した患者、および医療従事者の計144人にAZMが予防投与され、新たな感染者は出なかった。

ペンシルベニア州:2003年9月初旬、5日間の咳、咳の後の嘔吐、発熱を呈した3週齢の乳児が病院小児科に入院した。百日咳の可能性は低いと判断され、飛沫感染予防策は行われかった。乳児は翌日転院し、そこで百日咳菌が分離された。前病院で乳児を診察した医師は診察9日後に発症したが、咳があるときもマスクを着用せずに診療を続けていた。その後、当医師のNPを用いたPCRで百日咳菌DNAが陽性となった。その後、前病院で乳児と接触した医療従事者7人の百日咳感染が判明し、また、それらと濃厚接触した医療従事者9人が2週間以上続く咳をしていた。それらの7人および9人は検査では確認されなかった。さらに、当医師の診察を受けた小児2人がPCR陽性となった。感染拡大防止のために、症状を呈した医療従事者と、有症状者との濃厚接触者307名にAZMが投与された。

オレゴン州:2003年9月下旬、ある医師は12カ月齢の百日咳確定患者をICUにてマスクを着用して診察をした。一方で、9月中旬以降から長引く咳をしていた同僚1人とも接触があった。この同僚は、最近百日咳に罹患したことに合致する血清抗体価の上昇が確認された。乳児の診療の約2週間後、当医師は咳を呈し、2週間後のNPを用いたPCRが陽性となった。当医師との濃厚接触者が 129人明らかになったが、ICU患者1名が百日咳に罹患し、職員3人が百日咳様の症状を呈した。これら4名、および残りの接触者125名にAZMが投与された。その後、前述の症例と関連のない3人の症例が発見された。1人は感染源不明、2人はそれぞれの子供から感染していた。この3人は治療を受け、その接触者にはAZMが予防投与された。

(CDC, MMWR, 54, No.3, 67-71, 2005)

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