医療従事者の血液媒介ウイルスへの職業上の曝露サーベイランス、1996年7月〜2004年6月−英国

(Vol.26 p 77-77)

健康防護局感染症センターは、1996年7月1日〜2004年6月30日までの重要な事例が掲載された、医療従事者における血液媒介ウイルスへの職業上の曝露に関するサーベイランスの報告書を発行した。現在、イングランド・ウェールズ・北アイルランドで150カ所のセンターから報告が行われている。

C型肝炎ウイルス(HCV)陽性者が感染源となった医療従事者の抗体陽転事例は、9例報告された。9例全例が経皮的な曝露後に陽転していたが、そのほとんどが中空針による新鮮血への曝露であった。6例は医療処置後に発生していた。5例では、もしも鋭利な器具や医療廃棄物を安全に取り扱っていれば発生しなかったであろうと考えられた。HCVの抗体陽転率は、曝露後6カ月間の経過観察で抗体陽転しなかった者を分母、陽転した4例を分子とした場合、1.5%(4/264)であった。現状では曝露後の予防薬もワクチンもないが、被曝露者を適切に経過観察することは重要で、感染した場合、専門医によって早期にインターフェロンとリバビリンの併用療法が行われれば、HCV感染の慢性化への危険性は減少し、ほとんどの場合ウイルスは排除される。これら9例のHCV感染例では、7例が治療にて完治している。また、曝露後検査などについて不完全な情報しか得られない追跡調査報告もみられた。医療従事者の追跡調査がなされていない場合、血液媒介ウイルスへの曝露後の結果を知らないままであり、感染していることもありうる。

曝露後のHIV抗体陽転例は1例報告された。抗体陽転率は0.8%(1/122)で国際的な率より高かった。しかし、今回得られた陽転率は、曝露後6カ月での検査の報告が少なく、分母が不完全であったために過大見積もりの可能性がある。曝露を受けた医療従事者は、ほとんどが24時間以内に予防内服を受けていた。国のガイダンスでは曝露後できるだけ早期に、理想的には1時間以内にHIV予防内服を開始すべきであるといわれている。

曝露経路としては経皮曝露(78%:1,664/2,140)が最も多く、主に中空針による曝露(63%:1,056/1,664)で、粘膜曝露は22%(461/2,140)であった。職種別では看護系が45%(962/2,140)、医師・歯科医師が37%(793/2,140)を占めた。直接患者に接しない補助スタッフは2%みられたが、彼らは主に、医療従事者が普遍的予防策を守らなかったために受傷していた。37%が医療処置後の曝露で、器具の廃棄に関連した曝露であった。鋭利な器具や医療廃棄物の不適切な取り扱いが原因で、ほとんどが防止可能であった。国のガイダンスでは普遍的予防策を推奨している。鋭利な器具や医療廃棄物の安全な取り扱いに加え、リキャップをしない、使い捨て器具を手で分解しないなど、簡単な予防策を加えることで防止できる。

(CDSC, CDR Weekly, 15, No.4, 2005)

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