大腸菌のO血清群はこれまで173番目まで(ただし、欠番としてO31、O47、O67、O72、O93、O94、O122)定義されていたが、昨年、デンマークのコペンハーゲンにある血清学研究所(Statens Serum Institute: SSI)において新たに8つ(O174〜O181)のO血清群の追加論文が発表された1)、(表1)。我々はこれらの新規O血清群の標準株(表1)をSSIから購入し、これらに対する抗ウサギ血清を調製した。これらの抗血清を用いたこれまでの解析から、日本国内においても少なくとも血清群O176とO177に属する志賀毒素産生性大腸菌(STEC)がいくつか単離されていることが明らかとなっている2)。中でも、血清群O177に属するSTECには、溶血性尿毒症症候群の患者から単離された腸管出血性大腸菌が含まれており、今後の動向に注意を要する3)。
今後も、当部においてこれら新規血清群を含めたSTECの血清型のサーベイランスを行う予定でおりますので、これまで同様、型別不能のSTECが単離された場合には、当部宛に菌株を送付いただきますよう、お願い申し上げます。
文 献
1. Flemming Scheutz, Thomas Cheasty, David Woodward and Henry Smith, Designation of O174 and O175 to temporary O groups OX3 and OX7, and six new E. coli O groups that include Verocytotoxin-producing E. coli (VTEC): O176, O177, O178, O179, O180 and O181, APMIS (Acta Pathologica, Microbiologica, et Immunologica Scandinavica) 112: 569-584, 2004
2.伊豫田 淳、田村和満、渡辺治雄、市販血清では同定できない腸管出血性大腸菌の分離状況 2000年〜2003年、病原微生物検出情報 25(6): 141-143, 2004
3.高守堅守、伊豫田 淳、浅田純子、水本 洋、上松あゆ美、羽田敦子、渡辺治雄、田村 和満、秦 大資、腸管出血性大腸菌O177:HNMによる溶血性尿毒症症候群の1例、日本小児科学会雑誌 109(1): 54-57, 2005
国立感染症研究所・細菌第一部 伊豫田 淳 田村和満 渡辺治雄