hMPVは2001年にオランダで初めて分離されて以来、特に1歳未満の小児における気道感染症の重要な原因の一つであるとする報告がなされている。臨床的には、hMPV感染症はRSV感染症に類似し、もっともよくみられるのは細気管支炎とクループである。これまでの研究では、小児のARIにおけるhMPV感染の占める割合は4〜20%であると報告されている。
イタリアで今回実施された研究は、2002年11月1日〜2003年3月31日の期間に、ミラノ市内の一つの病院の救急部門を受診した15歳未満の小児、1,505名を対象に実施された。このうち、1,019例がARIの症状を呈していた。リファレンスラボで鼻咽頭ぬぐい液を用いてRT-PCRが行われたが、ARIを有した小児のうち、hMPVは42例(4.1%)に認められ、RSVは143例(14%)、インフルエンザは4.1%であった。RSV感染では入院率がわずかに高かったものの、これらの3疾患での臨床転帰は類似していた。
hMPV感染小児で最も多く認められた症状は、38℃を超える発熱(80%)、喘鳴(26%)、咽頭炎(26%)、喘息症状の悪化(14%)であった。hMPV感染小児ではインフルエンザ感染小児と比較して、細気管支炎と喘息の悪化が多くみられ、また、RSV感染小児と比較すると発熱が多くみられた。興味深いことには、hMPV陽性児の家庭内接触者はRSV陽性児の家庭内接触者と比較して、5〜7日間の追跡調査の間に呼吸器症状を発症し、医療機関を受診することが多かった。
この研究結果からは以下の結論が得られる。
・小児におけるARIの鑑別診断として、hMPV感染症を考慮すべきである。
・小児におけるhMPV感染症はしばしば家庭内感染を引き起こし、健康および経費に大きな影響を与えるので、疾患負荷の把握がより正しく行われれば、将来、介入戦略を立てるのに役立つであろう。
・hMPV感染症の重症化のリスクファクターは明らかでなく、さらなる研究が必要である。
・小児におけるhMPV感染症の有病率が高いため、病院の微生物検査室においては、適切な診断手段を持つことが勧められる。
(Eurosurveillance Weekly, 10, Issue 6, 2005)