知的障害者施設におけるサポウイルスの集団発生−千葉県

(Vol.26 p 100-100)

サポウイルスはノロウイルスと同じカリシウイルス科に属し、小児に急性胃腸炎を引き起こすウイルスである。これまで集団発生の報告は少なかったが、近年仕出し弁当や給食を原因とした食中毒の報告がされている。今回成人における集団発生を経験したので報告する。

2005年2月中旬、千葉県内の知的障害者厚生施設で急性胃腸炎の集団発生の届出がされた。当該施設は入所者50名(19歳〜56歳;男性35名、女性15名)、職員30名で、そのうち入所者17名、職員5名が発症した。臨床症状の発現頻度は、下痢80%、嘔吐50%、嘔気10%、発熱20%で、ほとんどが2、3日で回復した。日別患者発生状況をに示した。2月17日に1名の発生があった後、20日7名、21日6名をピークとし、26日まで患者発生が続いた。20日、21日の大きなピークは単一曝露が考えられた。施設の建物は2階建てになっており、すべての部屋は2人用で、1階に16室、2階に12室であった。入所者は同じ食事をとっているにもかかわらず、患者発生は1階の部屋に限られており、このことから食事との関連性は薄いと考えられた。施設で行っている作業工程と患者発生に関連性もみられず、感染源を特定できなかった。また、22日〜26日の患者発生は二次および三次感染と思われた。

患者便5検体(入所者3名、職員2名)についてノロウイルスのRT-PCRを行ったがすべて陰性であった。電子顕微鏡では3名からSRSVを検出した。サポウイルスRT-PCRを行ったところ、5検体すべて陽性となった。サポウイルスはこれまで5つのGenogroupが報告されている1)。系統解析の結果、検出した株はすべて同一でありGIであった。また、今冬の小児散発例2検体からサポウイルスを検出したが、いずれもGIIで集団発生の株と異なっていた。

今回の集団発生の感染経路は明らかでないが、施設の特殊性から汚物により環境が汚染され施設内に広まったと推測された。また、成人においても人→人感染を起こすことが示唆され、今後サポウイルスの動向を監視する必要があると思われた。

文 献
1)Farkas T et al., Arch Viol 149: 1309-1323,2004

千葉県衛生研究所
篠崎邦子 岡田峰幸 小川知子 窪谷弘子 吉住秀隆 一戸貞人
千葉県市原保健所
児玉賀洋子 木村 威 藤 幸子

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