麻疹の排除と先天性風疹症候群の予防に向けての進歩、1990〜2004年−WHO 欧州地域

(Vol.26 p 124-124)

1988年のWHO欧州地域委員会(全52カ国)において、2007年までに麻疹の地域内伝播を阻止し、2010年までに、先天性風疹症候群(CRS)の発生を10万出生あたり1例未満にすることが目標として採択されている。この目標を達成するために、以下の6つの戦略があげられている。1)定期接種において、麻疹含有ワクチンの2回接種率を高いレベルで達成し、維持する、2)麻疹感受性者群に対して補足的ワクチン接種活動(SIAs)を実施し、2度の接種機会を提供する、3)SIAsを利用して、風疹感受性者には風疹と麻疹の混合ワクチンを接種する、4)出産可能年齢の女性で高い風疹ワクチン接種率を達成する、5)精力的な症例探査と検査室診断で、麻疹・風疹・CRSのサーベイランスを強化する、6)医療関係者や住民に対して、予防接種のベネフィットとリスクについての質の高い情報を入手しやすくする。

麻疹、風疹、およびCRSサーベイランス

2004年の麻疹および風疹サーベイランスの基になるのは、44カ国における臨床診断症例を月ごとにまとめて報告するデータ、および5カ国における個々の症例に基づいたデータであった。また、年間症例数を報告したのは51カ国であった。さらに、地域の高次検査機関あるいは世界の専門高次検査機関と連携する、国内の麻疹/風疹検査機関を指定していたのは、計47カ国であった。

麻疹と風疹の予防接種

2004年には、麻疹ワクチンの2回接種を定期接種として行っていたのは全52カ国になった。2004年には風疹含有ワクチンは47カ国で使用されたが、その内訳はMMRワクチンが45カ国、MRワクチンが1カ国、風疹単独ワクチンが1カ国であった。

2003年には、麻疹含有ワクチンの1回接種率は95%以上が27カ国、90%以上が36カ国であった。1990〜2004年にかけてSIAsを行ったのは9カ国であるが、MRワクチンが5カ国、MMRワクチンが1カ国で使われ、同時に出産可能年齢女性に風疹ワクチン接種を行ったのは3カ国であった。

麻疹、風疹、CRSによる負荷

2003年の麻疹報告数28,206例は、地域全体では人口10万に対して3.2例であり、接種率が徐々に増加したことと相関している。1999〜2003年には集団発生が18件報告された。麻疹による死亡は過少報告であるが、2002年、2003年に各10例、2004年に7例が報告されている。欧州地域では風疹の発生は依然高く、2003年には304,320例の報告があった(125,187例がロシア、120,377例がルーマニア)。2001〜2003年にCRSは47例が報告されたが、17例は2003年にルーマニアで起きた風疹流行によるものであった。

(WHO, WER, 80, No.8, 66-71, 2005)

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