同一検体から複数のウイルスが検出された感染性胃腸炎散発事例−千葉市

(Vol.26 p 122-123)

2004年11月〜2005年1月までの3カ月間に、定点および協力医療機関から感染性胃腸炎と診断された糞便72検体、直腸ぬぐい液7検体、腸内容物8検体、吐物3検体の検査依頼があり、検査を行ったところ、計90検体中62検体(69%)から下痢症ウイルスが検出された。そのうち同一検体から複数のウイルスが検出されたものが数例みられたので報告する。

糞便、腸内容物、吐物はイーグルMEMを用いて3%乳剤を作製し、凍結融解後、3,000rpmで15分間遠心を行い、上清を回収したものを検査材料とした。検査はノロウイルスについてはCOG1F/G1-SKRおよびCOG2F/G2-SKRを用いてRT-PCRを行い、目的とする大きさの増幅産物が認められたものについてダイレクトシークエンスを実施した。A群ロタウイルスについてはロタクロン(TFB製)を用いた。アストロウイルスについてはAmplified IDEIA Astrovirus(Dako Cytomation製)を用いた。またHeLaおよびCaCo-2細胞に接種を行い、その他のウイルスの分離を試みた。

その結果、ノロウイルスgenogroup II(GII)が50検体、ノロウイルス genogroup I(GI)が1検体、A群ロタウイルスが16検体、アストロウイルスが3検体、アデノウイルス40/41型が1検体、エコーウイルス25型が1検体(重複を含む)から検出された。このうち10検体からは、に示したとおり、それぞれ2種類のウイルスが検出された。10例中、ノロウイルスGIIとA群ロタウイルスが検出された例が5例と最も多かったが、発生状況が家族内発生もしくは散発であり、また患者住所地にも偏りがないことから、ノロウイルス、A群ロタウイルスが混在した同一汚染源に由来するものでなく、この時期にそれぞれのウイルスが市内で流行していたものと考えられた。

検出されたウイルスの中で最も多かったのがノロウイルスGIIであったが、片山らの分類(IDWR、2004.11)によるgenotype別では GII/4型が37検体と、検出された全ノロウイルスGIIの74%を占めた。また、同時期(2005年1月6日〜1月12日)に市内3カ所の老人ホームでノロウイルスによる感染性胃腸炎の集団発生がみられたが、これらのgenotypeもすべてGII/4型であった。

以上のことから、2004年11月〜2005年1月までの3カ月間に千葉市内でノロウイルスGIIおよびA群ロタウイルスなどの流行があり、それらのウイルスの単独、または複合感染による胃腸炎が散発したことが示唆された。

千葉市環境保健研究所
田中俊光 横井 一 都竹眞実 秋元 徹 三井良雄 小笠原義博 池上 宏

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