愛媛県内で同一パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)型の腸管出血性大腸菌(EHEC)O157感染症が多発したので、その概要を報告する。
2004年11月中旬に集中してEHEC O157感染症が多発した(表1)。そのうち事例3は飲食店で発生した食中毒で、11月2日に松山市内の飲食店を利用した1グループ8名のうち3名が下痢腹痛等の症状を呈し、そのうち2名からEHEC O157が検出された事例であった。喫食状況等の聴き取り調査の結果、飲食店の会食を原因とする食中毒と断定され、非生食用牛レバーの生食が原因と考えられた。血清型はO157:H7(VT1&2)で、12薬剤に対してすべて感受性であった。
この食中毒事例と前後して14名のO157 (VT1&2)患者が発生したことから、当所においてPFGEを実施した結果、16株すべて、PFGEパターンがほぼ一致した(図1)。このことから共通の感染源または二次感染等が考えられたが、疫学調査の結果、その原因は特定できなかった。愛媛県と松山市は住民への食中毒予防の注意喚起とともに、飲食店および食肉販売店等に対して衛生管理の徹底を指導した。
今回の一連の事例で散在的集団発生が示唆されたことから、県内のと畜場内に搬入された牛におけるO157等のEHECの保有状況を調査した。O157、O26は、牛の糞便をノボビオシン加mECで増菌後、常法によりCT-SMAC、CT-RMACで分離培養を行った。一方、増菌後のブイヨンをBHI寒天培地に接種後、発育した菌塊をポリミキシンB処理し、VTEC-RPLA(デンカ生研)でVeroトキシン(VT)試験を行った。VTが陽性となった検体の増菌培地からDHLで大腸菌を分離し、再度VTの確認および血清型別を行った。結果は86検体中14検体からEHECが分離され、保菌率は16%であった。血清型の内訳を表2に示した。O157:H7は7株分離され、そのうちVT1&2産生の5株は、当所のPFGEパターン分類でIIからVの各パターンを示し(図2)、11月に多発した患者由来株(I)とは異なっていた。
愛媛県立衛生環境研究所
吉田紀美 難波江芳子 青木紀子 田中 博 大瀬戸光明 井上博雄
松山市保健所
仙波和幸 中村清司 近藤弘一 芝 信明 上田 昭
愛媛県保健福祉部健康増進課 白石光伸
愛媛県保健福祉部薬務衛生課 松岡 良