2004年後半からドイツ北西部において、Salmonella enterica serovar Bovismorbificans(S.B.)感染の届出が増加した。2004年11月29日〜2005年3月17日までの13週間に、ロベルト・コッホ研究所(RKI)に525例の検査確定例が報告されたが、発症日のピークは2005年第3週であった。62歳女性1名が死亡している。
2005年1月にEnter-netで調査したところ、他のヨーロッパ諸国ではS.B.の増加は見られなかった。S.B.は、2001〜2003年にドイツで検出されたサルモネラ血清型の上位10型の1つである。
RKIと連邦政府による初期の検査結果、および地方保健局が実施した患者からの聞き取りからは、生の豚肉製品が感染伝播を媒介したとの仮説が立てられた。患者数の多い州(Nordrhein-Westfalen、Hessen、Mecklenburg-Vorpommern、Schleswig-Holstein、Hamburg、Niedersachsen)の協力により、症例対照研究が実施された。症例定義は「上記地域に住み、2004年12月1日〜2005年2月10日の間に胃腸炎を発症し、便培養の結果、S.B.が陽性であった人」とされ、症例1例ごとに、電話番号の無作為選択で対照1例を選択した(症例141例、対照135例)。質問を行った食品中、生豚ひき肉が明らかにこの疾患との関連が認められ(オッズ比:11.0、95%信頼区間:4.2-28.9)、さらに、特定の発酵生豚肉ソーセージ(Zwiebelmettwurst)が感染に関連していた。他の食品の喫食については、症例と対照とに違いを認めなかった。
菌株のサブタイプを比較すると、症例の分離株と複数の豚肉製品から検出された分離株とは、PFGEとファージタイプ(PT24)では区別がつかなかった。この知見に基づき、この集団発生の原因食品が食肉供給業者の段階にあった可能性を考え、それを突き止めるべく徹底的な調査が行われている。
関連が指摘された食肉供給業者のうちの一つは、他のヨーロッパ諸国および非ヨーロッパ諸国へも製品を輸出していることから、他国でも関連症例が発生した可能性がある。
(Eurosurveillance Weekly, 10, Issue 12, 2005)